AI

2024.05.14 13:30

異分野の先鋭たちに問う。AI時代の「働く」と生き残る人材の条件

イラストレーション=マルコス・モンティエル

数字で測れない最後の1%が仕事の醍醐味

ベテランち
advertisement

青松輝は灘中学・高校を経て、東京大学理科三類に合格。現在は同大学医学部の4年生として在籍中だが、「ベテランち」という名でチャンネル登録者18万人を超えるYouTuberとしての顔をもつ。日本最高峰の学歴を生かして、受験や東大理三に関するネタでコロナ禍、一気にブレイクした。さらに、YouTubeより早く始めていたという短歌においても、昨年の8月には歌人として初の歌集を出版している。なんでも「ハック」できてしまうのではないかと思える器用さ、要領の良さをもち合わせた彼が漂着した先がYouTubeや短歌のような絶対解のない表現であったのは大変興味深い。

「AI時代の生き方として、クリエイティブしかやることがなくなっていくのでは」。そんな思いが幼いころからあったという。けれど、そのクリエイティブも今やデータを用い、ある程度までは解析が可能になってきている。「受験でもそうですが、僕は数字を信頼しています。今しているYouTube動画だってデータで99%は解析できる。けれど、最後の1%がわからない、それが面白くてやっているんです」。

高難易度のパズルを解き続けてきた彼がその1%に臨む営みのなかで考えていること、それが「他人軸」であるという。大衆は、人間は、何を感じ、何を求めているのか──。この答え探しが、未来に残される仕事になるのかもしれない。「自分で自分をかっこいいと思いたい」と言う青松は、その基準を「周りの人が笑っていること」と定義する。そして、面白さを追求するために、「ギリギリのところを攻められる人でありたい」と、自分が最も表現したいことと、他者が求めていること、感じていることの最適なバランスを探っている。彼はそんな「自分と戦っているその状態が好きだ」と語る。
advertisement

「人生ゲーム」というゲームボードの上に青松がいたなら、ここまで彼はすべてのカードを手にしてきたように見える。では、それらのカードを使って、これから何をしたいのか聞いてみた。「自分の人生で出会うべき感情にすべて出会うこと、ですかね」。

古生物博士が教える 「位置取り」という生き方

芝原暁彦

「アンモナイトと、その親戚のオウムガイ。なぜアンモナイトだけが絶滅し、オウムガイは生き残ったのかご存じですか?」こう聞いてくる古生物学者、芝原暁彦の表情は、恐竜好きの少年そのものだ。「正解は『位置取り』なんですよ」。

約6600万年前、白亜紀末に小惑星が地球へ衝突したことにより、地球規模での気候変動が起こった。その影響を受け、アンモナイトは絶滅したといわれている。一方、生き残ったオウムガイの命運を分けた「位置取り」とはどういうことなのか。

海洋生物にとって、栄養分の豊富な海面表層は、常に生存競争が働く厳しい環境だ。そこで勝ち抜いたアンモナイトやイカが浅瀬を生息の場としていた。競争に負けたオウムガイは、水温も低く、餌も少ない厳しい環境の海底に追いやられたわけだが、結果として、気候変動の衝撃を受けにくかったことから、そのポジショニング戦略が奏功したという。

「古生物学的に見ると、どんな環境下でもその状況を生かしている人が進化していくように思えるんですよね」。確かに、絶滅期に生き残った生物は、低温や高温など環境変化への耐性をもっていたり、気候変動の影響を受けにくい場所へ移動できる力や環境知覚能力があったはずだ。例えば、外に出ることができなかったコロナ禍でも、「自分に適した環境をつくれる人や、自宅で『さぎょいぷ(作業しながらスカイプをすること)』して共同環境をつくった人は、サバイブしやすかったのではないでしょうか」。

今、世界で起きている動きは、人間のこれからの「生き残り」を考えるうえで重要な変化になるのではないか。「地球の歴史上、どんなに厳しい環境の『変化』があっても、それを乗り越えて次世代に繋げる生物が存在します。彼らの生き様が、コロナ禍や気候変動といった厳しい『今』を生きる我々に、適応力や対応力のヒントを与えてくれるはずです。

次ページ > 人間のもつ限界性がクリエイティビティを育む

文=谷本有香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事