北米

2024.05.07 08:00

老朽化する米国の原子力発電所 稼働延長より新規建設の規制見直しを

米カリフォルニア州のディアブロキャニオン原子力発電所。2023年6月26日撮影(Brian van der Brug / Los Angeles Times via Getty Images)

問題なのは、放射線恐怖症とも言える現行の規制の枠組みの下では、古い原子炉の廃炉でさえ時間と費用のかかる困難な作業になることだ。廃炉には除染や解体、廃棄物処理といった一連の作業が必要で、ディアブロキャニオン発電所の閉鎖にかかる期間は数十年、費用は約40億ドル(約6100億円)に上ると推定されている。廃炉後、放射性廃棄物を永久に敷地内で保管し続けなければならない発電所もある。
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放射線に対する過剰な恐怖心により、原子力発電所の新規建設や老朽化した原子炉の廃炉が必要以上に困難になっており、業界は一種の監獄に閉じ込められている。原子力発電所は、当初予定されていた寿命をはるかに超えて稼働し続けている。老朽化した発電所が閉鎖されても、敷地をすぐに再利用することはできない。その結果、深刻な硬直性が生じる。

各種環境保護団体は、老朽化した原子力発電所は許容できない危険をもたらすと主張し、現在、ディアブロキャニオン発電所の即時閉鎖を求めて訴訟を起こしている。こうした団体は危険性を誇張しているようにも見えるが、あながち間違いとは言い切れない。老朽化した時代遅れの原子炉が原子力発電所の大半を占めるのは、理想的なことではないからだ。業界が健全であれば、ディアブロキャニオンのような老朽化した発電所は、安全性が高く効率的な新世代の原子炉に着実に置き換えられていくだろう。

もちろん、ディアブロキャニオンの操業延長には利点もある。カリフォルニア州の電力供給の安定性が保たれ、発電時の二酸化炭素の排出を抑えることができる。何より、新規発電所を一から建設するより、既存の発電所の寿命を延長する方が簡単だ。だが、これは原子力発電の老朽化問題を浮き彫りにする、一時しのぎの応急処置に過ぎない。
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結局のところ、原子力業界は正確で近代的な放射線リスク評価に基づいた規制法を必要としている。現状が変わらない限り、ディアブロキャニオンのような状況が増えると予想される。原子力発電所の新規建設だけでなく、既存の発電所の閉鎖ですら困難を極めるため、老朽化した発電所の操業を延長するしかないのだ。この停滞から抜け出すには、支配的な考えを根本から変えていく必要がある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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