経済・社会

2024.05.07 09:00

激化する中米貿易摩擦、さらなる関税の掛け合いに発展

中国当局は、米国の「軽率」な行動全般を批判する以外、これらの脅威についてほぼ反応を示していない。中国政府が行ったのは、米国製の化学製品への新たな関税だ。商務部は、殺虫剤や除草剤、医薬品開発に広く使用されている化学物質であるプロピオン酸に43.5%という高い関税を設定した。

中国の論評は、この関税の影響を最も受ける米企業2社(ダウ・ケミカルとイーストマン・ケミカル)については言及していないが、「中国市場でダンピング(不当廉売)している」と非難している。中国がこの措置を取ったのはバイデンが新たな関税をかけると脅した数日後のことだ。言葉にはしていないものの、事実上、2国が同じ土俵の上にいることになる。

中国による新たな関税は、米経済、あるいはダウ・ケミカルとイーストマン・ケミカルの収益に大きな影響を与えることはないだろう。プロピオン酸は広く使用されているとはいえ、その世界市場は比較的小さく、2022年はわずか約13億ドル(約1990億円)だった。中国は世界で取引されるプロピオン酸の約4分の1を消費し、米国が唯一の供給源ではないため、米国の売上高はせいぜい3億ドル(約460億円)だ。だがもちろん中国の関心は、特定の製品の販売を制限することよりも、脅迫関税が報復を招くというメッセージを米国に送ることにある。

関税、補助金そして調査というこの熾烈なゲームでは、中国の方が分が悪い。米国は欧州連合(EU)と日本、そして英国を味方につけている。これらの国も中国の貿易慣行に不満を抱いており、中国製品への関税や中国の貿易に対抗するその他の措置を検討中だ。中国と競争する米国にとって強力な味方だ。また、11月の大統領選でバイデンが敗北すれば圧力が緩和されるのではという期待を中国は持つことはできない。トランプは大統領の座に返り咲けば中国製品に対する関税をさらに引き上げると約束している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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