テクノロジー

2024.05.12 08:00

「第二の人生」を得たウクライナ人女性、波力エネルギーで変革を起こす

ブレイバーマンによると、問題はまず価格で、次に装置の維持だった。海の中で壊れてしまったものもあった。「装置が3日以上もたなかったら、保険はおりない。おそらくこれも大きな問題だ」ブレイバーマンはまた、波力が再生可能エネルギーであるにもかかわらず、環境保護を訴える人々が波力発電に反対し、成功の妨げになり得ることにも気づいた。オフショアの波力発電装置は海底とケーブルでつながるため、海洋生物がケーブルに絡まる。そして5つ目の問題は、「発電装置が設置されるのはかなり沖合であることから、どうやって送電網に接続するのか」ということだった。オフショア洋上風力発電が送電網に接続していることから、可能ではあるがコストがかかる。そこでブレイバーマンは「単純な方法を考え始めた」という。そして「ほとんどの問題は装置の設置場所に絡むもの」だと気づいた。

エコ・ウェーブ・パワーの誕生

波力発電への情熱を共有する、連続起業家でもある投資家から支援を受けたブレイバーマンはエコ・ウェーブ・パワーを立ち上げ、コスト、耐久性、保険、環境への影響、送電網への接続という5つの課題に留意しながら装置を開発した。アイデアを検証するために母国ウクライナに戻り、エンジニアを対象としたコンペを開催した。

そうした取り組みが実を結んだ。同社のウェブサイトには「特許取得済みのスマートでコスト効率に優れ、海の波を環境にやさしい電力に変える技術を開発した」と書かれている。



仕組みはどうなっているのか。ブレイバーマンによると、桟橋や防波堤など既存の人工構造物に浮遊する装置をつなげる。装置は波の動きに合わせて上下し、この動きが油圧シリンダーを押し、生分解性の流体が陸上に設置されたアキュムレーターに送られる。流体がアキュムレーターに溜められ、波が高いほど圧縮度が増す。その圧縮された流体がリリースされるときに生じるエネルギーでモーターが回り、発電機からクリーンな電気が送電網に送られる。

米国で試験実施へ

エコ・ウェーブ・パワーは4月に英石油大手シェルと契約し、米ロサンゼルス港で初の波力エネルギー試験を行うことになった。また、ブレイバーマンは今年初めに、女性のリーダーを育てる非営利団体バイタル・ヴォイスの「2024グローバルリーダーシップ賞」を受賞した。

2度目の人生を生かして変化を起こす。この決意をブレイバーマンは強調する。「男性優位のこの業界で、女性のあなたにはできないという言葉をよく耳にする。闘う者として、そして自身が取り組んでいることを本当に信じている者として、そうではないことを証明したい。できると思う。それが大きな原動力だ」と語った。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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