洋上風力発電、タービンの大型化で環境負荷の軽減可能 最新論文

洋上風力発電のタービンを大きくすることには複数の利点があることを最近の研究が示した(Getty Images)

洋上風力発電のタービンを大きくすることには複数の利点があることを最近の研究が示した(Getty Images)

Scientific Reports誌に掲載された新たな研究論文は、洋上風力発電の環境フットプリント(環境負荷を見える化した指標)を改善するためには、より大きいタービン(原動機)を作ることが今後のカギとなる可能性を示した。

ドイツのInstitute of Coastal Systems(沿岸システム研究機関)のナヴィード・アクタル率いる研究チームは、欧州の北海にある5メガワットの風力タービン5基を、より大型の15メガワットのタービンに置き換えることによって、全体効率を高めながら、一部の環境破壊効果を減少させることを示した。大型の風力タービンが環境的によい結果を生む2つの理由を、論文に基づいて以下に記す。

1. タービンを大きくすれば数を減らせる

研究チームは欧州の北海地域における洋上発電に関する高度なシミュレーションを、異なる2つのシナリオについて実施した。1つは5メガワットの発電機を0.6キロメートル間隔で配置したもの、もう1つは15メガワットの発電機を1.8キロメートル間隔で配置したものだ。15メガワットのタービンの直径は、5メガワットの約2倍なので、与えられた面積で同じ量のエネルギーを生成するために必要な数は少なくてすむ。

シミュレーションによると、15メガワットのタービンを使うことで、3分の1の数で総エネルギー容量108ギガワットを達成できるという。 
洋上風力発電施設の建設にはさまざまな環境コストがかかるため、少数の大型タービンで同じエネルギーを得るのが最適解かもしれない(Getty Images)

洋上風力発電施設の建設にはさまざまな環境コストがかかるため、少数の大型タービンで同じエネルギーを得るのが最適解かもしれない(Getty Images)

「大型のタービンはローターの直径が大きいため、より多くの風を捕らえ、より多くの電力を生成できます」と研究チームはいう。「また、上空の方が強くて安定した風が吹いているため、背の高いタービンは、安定したより確実なエネルギー源になります。加えて、弱い風でも動作を続けられるため、発電可能な時間も長くなります」

そして、建設に必要な発電機の数が3分の1に減れば、建設中の海上交通量も減る。これが重要なのは、海上交通が減少すれば、海洋動物と衝突する可能性も減るからだ。

2. 大きいタービンは大気への悪影響が少ない

大きい風力タービンを広い間隔で配置することによって、もう1つの重要な環境的配慮である、局所的な気候への影響が小さくなる可能性が高いこともシミュレーションを通じてチームは示した。ある研究では、風車ウエイク(風車ブレードの回転に伴いその風下に発生する風速の減衰域)により、発電所の風下で気温や湿度の上昇などの局所的な気候の変化が起きる可能性を示唆している。

「海表面近くの風と熱流束への影響は、少数の大型風力タービンの方が、多数の小型風力タービンよりもやや小さくなります」と研究者らはいう。「海表面における風と熱流束は、海洋力学や生態系の重要な影響因子なので、大きいタービンの方が与える影響が小さいことを意味しています」

この情報に基づき研究チームは、北海に設置された5メガワットのタービンを大型のタービンに置き換える可能性を検討するようEUに提案している。

「総合的に、洋上発電に15メガワットのタービンを導入することは、海洋力学と海洋生態系にとって利益があり、EUのカーボンニュートラル目標とも一致しています」と論文は結論づけた。

EUは2050年までのカーボンニュートラルを目指している。洋上風力エネルギーはこの目標達成において重要な役割を担うとされている。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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