大森:僕自身も、やりたいことがかなり似ていたんです。
——お互いの作品をどう観ていましたか?
寺内康太郎(以下、寺内):僕は昔からテレビに憧れがあったので、大森さんがテレビでフェイクドキュメンタリーをやられているのを、指をくわえて見ていました。
「フェイクドキュメンタリーQ」はYouTube番組ですが、“テレビ制作会社に保管されていた撮影素材”を題材にした話がいくつかあります。なので、「このテープもってないですか?」(昔の番組の録画テープを募集・発掘するモキュメンタリー)を観たときは特に、やられたなと思いました。僕もああいうものをやりたかったんですよね。
大森:皆口さんの「ゾゾゾ」(2018年〜)は、心霊スポットや恐怖ゾーンなど日本全国の“ゾゾゾスポット”をレポートするYouTube番組ですが、ただの心霊系YouTuberではなく、エンターテインメントをかなり意識されているのに驚きました。
心霊系は、場所に依存してその場所の雰囲気で押し通すというケースが多いと思うのですが、「ゾゾゾ」は視聴者にどこを楽しんでもらうかを事前にしっかり考えている。そうしないと生み出せない部分があるんですよね。ドラマ的というかテレビ的なつくり方だなと思います。
皆口:自分は元々Webデザイナーで、映像を専門的に学んだことはなかったのですが趣味が高じて「ゾゾゾ」を立ち上げました。ホラーに限らず昔からテレビを見るのが好きなので、やっぱりテレビの影響が作品に出ていると思います。
寺内:僕はホラー業界に長くいるんですが、プロアマ関係なく本当に怖いものをつくろうとしている人の作品は強いんだなと感じたのが「ゾゾゾ」でした。皆口さんとは現在「フェイクドキュメンタリーQ」を一緒に制作していますが、まさに“ホラーを本気でやってる人”ですよね。
大森:「フェイクドキュメンタリーQ」を観たとき、これは「新たなムーブメントが起こるぞ」と思ったのはすごく覚えています。一切逃げがないホラーフェイクドキュメンタリーをこんなソリッドな表現で……と衝撃を受けました。僕にとってはエポックメイキングな作品でした。
——近年はフェイクドキュメンタリー人気で作品数も増えてきましたが、今求められているのはどのような作品でしょうか。
寺内:フェイクドキュメンタリーは元々、コスパが良いという理由で制作されているものも多かった。ただ、最近は変わってきていて「フェイクドキュメンタリーだからこそ表現できるもの」に特化してきています。制作側は、やればやるほど本当なのか嘘なのかわからなくなってくるんですが、それも含めて楽しくて。そうした作品がもっと求められるといいなと思います。