米国で市販の牛乳から鳥インフルエンザ検出 FDAは安全性強調

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米食品医薬品局(FDA)は23日、米国内で市販されている低温殺菌牛乳がH5N1型鳥インフルエンザの試験で陽性反応を示したと発表した。同局は、検出されたのはウイルスの残骸で、消費者の健康に害を及ぼすものではないとしている。同国では1カ月ほど前から複数の州で、乳牛間で同ウイルスの感染が広がっている。

FDAは、牛乳に含まれる有害な細菌やウイルスは、一定の温度で加熱する低温殺菌の過程で死滅または不活性化すると説明。低温殺菌は有害なウイルスを死滅させるが、すべてのウイルス粒子を除去できるわけではないため、今回、牛乳の一部からウイルスの残骸が検出されたとの見方を示した。米農務省も、ウイルスに感染した牛から生産された牛乳は転用または廃棄されるため、米国内で流通する牛乳は安全だとしている。

今回陽性反応を示したサンプルは、即座に人体に影響を及ぼすものではないが、乳牛間の鳥インフルエンザの感染が拡大し続けていることを示唆している。

FDAは現在の所見の精度を高めるべく、市販されている牛乳や牛乳加工工場、感染した乳牛の大規模な検査を実施している。同局は、生存ウイルスを判定するための「究極の判断基準」とされる卵接種試験で鳥インフルエンザの陽性所見を評価する。検査結果は、今後数日から数週間のうちに発表される予定。

農務省によれば、これまでに、アイダホ、ニューメキシコ、テキサス、サウスダコタ、カンザス、ミシガン、オハイオ、ノースカロライナの各州で、家畜から鳥インフルエンザが検出されている。

鳥インフルエンザが人から人へ感染したという証拠は今のところないが、世界保健機関(WHO)のジェレミー・ファーラー主任研究員は先週、人間間の感染の脅威が高まっていると警告した。WHOは2003年1月~24年3月28日までに、888人の鳥インフルエンザ感染者を報告。うち52%が死に至っている。

H5N1型鳥インフルエンザの発生源は、野生の渡り鳥とみられている。感染した動物に直接接触すれば人間が感染する可能性もあるが、米疾病対策センター(CDC)は現在のところ、一般市民への危険性は低いとしている。CDCは先週、食肉用の牛からは鳥インフルエンザは検出されていないと説明し、牛乳の回収の可能性も否定した。

米国では今月初めにテキサス州で1人、2022年にコロラド州で1人がH5N1型ウイルスに感染した。CDCの報告によれば、テキサス州の患者が訴えた症状は目の充血のみで、コロラド州の患者は疲労を訴えたが、数日で回復した。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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