障がいのある人の自立の伴走者「エージェント」
障がいのある人の自立の伴走者は保護者やヘルパーだけかというとそうでもない。もちろん障がいの程度にもよるのだが、前出の「働き方ロードマップ」の右側に示したように、障がい者と企業を繋ぐ「エージェント」の存在もある。昨今はさまざまなエージェント会社もあり、どんなものがあるのか、わかりやすく以下のようにカオスマップを制作した。
障がいの程度や種類によって、一般的な職業紹介というものから、農園型のサテライト就労や、コワーキングタイプの就労形態で就労先の事務仕事を行うものなども登場している。
なかでも、株式会社ディンプルの行っている障がいのある人のためのコワーキングスペース事業は、企業と障がいのある従業員が雇用契約を結び、従業員はコワーキングスペースでディンプル社員のサポートを受けながらリモート勤務をするという新しい試みだ。
経験豊富な専門スタッフが、体調や障がい特性に配慮した業務の切り出し、教育研修、メンタルサポートなどを行うため、従業員は無理なく仕事に慣れていくことができる。
コワーキングスペースは、支援学校や就労移行支援事業所などのレイアウトに似ており、1人用の休憩スペースも設置されている。また、音を気にする障がい者のためには固定電話やFAXを配置しないなど、合理的配慮がなされた環境を提供している。
前出の働き方ロードマップに沿って考えた場合、伴走者はエージェントとなり、就労、生活、定着の就労生活に関して、時には就労移行支援事業所とチームとなって、障がいのある人をサポートしている。この場合、保護者は積極的な伴走をするのではなく、自立した生活を見守る役割のみを担うことになる。
このようなコワーキングスペースを用いた障がい者向けの就労支援は全国でも珍しく、障がい者雇用に課題を抱える企業にとっては心強いサービスとなりそうだ。
子どもの障がいの程度に応じて、18歳以降の居場所を探すのは簡単なことではない。
「医療的ケアが必要なため受け入れを断られてしまった」「放課後等デイサービス(障がいのある子どもを対象とした児童福祉サービス)が利用できなくなり夕方以降の居場所がない」といった悩みを抱える家庭は多く、保護者が働くことを諦めざるを得ないケースもある。また、支援学校を卒業する年になると同時に、保護者が受け入れ先の下見に行き比較検討するということも珍しくない。
「18歳の壁」とも呼ばれるこの社会課題を解決するため、病児や障がい児の保護者や障がい者支援施設などが対応に乗り出しているものの、圧倒的に受け入れ先が不足しているのが現状と言える。
今回、当事者へのインタビューでも「当事者も保護者も同じように年をとっていくのだけれど、親はいつまでも子どもを子どもだと思っているから、ずっと心配していると感じます」という言葉があったように、当事者と保護者の支え合いにはやはり限界がある。
障がいの程度にもよるが、できるだけ家庭以外の居場所を担保して、社会的資源や人と繋がり合いながら成長していってほしいと筆者は感じた。