そこに出品されている製品のなかには、自らの経験をもとに開発されたケアのためのグッズが複数ある。
例えば、口から栄養が摂取できない子どものためにつくられた胃ろうのカバー。生まれつき耳が小さい小耳症の子どもや、耳や頭部周辺に外傷があっても使えるマスク。普段から持ち歩く吸引器のためのバックなどだ。みな、当事者ならではの気づきや工夫が施されており、それが目に見える形となって製品化されている。
しかし、大きな企業で、このジャンルに参入してきているところはあまりない。 ここ数年で、少しずつ「ユニバーサルデザイン」を取り入れている企業は増え始めてはいるものの、病気や障害のある人を起点に物づくりをしているところはとても少ない。
スタイにもなるエプロンドレスの開発
そんななか、2018年に立ち上げられたのが、社会課題解決をめざす企業横断型ユニットSocial WEnnovatorsとユナイテッドアローズによる「UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.(ユナイテッド・クリエイションズ・オーフォアワン・ウィズ・ユナイテッドアローズ)」だ。
名称に含まれる「041」とは、「ALL FOR ONE」を意味しており、いまだ解決されていない誰か1人の課題を起点に、プロダクトサービスを開発するプロジェクトの総称だという。
このプロジェクトでは、 こうしたコンセプトのもと、第1弾として病気や障がいを抱える人たちに向けた全6アイテムが開発された。そのなかの1つが「スタイにもなるエプロンドレス」だ。
開発にあたって、どのような経緯を辿ったのか。ユナイテッドアローズの企画担当者である稲沢日南子さんに話を聞いた。
「障害のある子どもたちの困りごとについて、私自身はなかなか身近に感じたことはなかったのですが、当事者のご家族にヒアリングしていたときに、かなり成長してからもよだれが出てしまう子どもたちがいるということを初めて知りました。それがきっかけです。
スタイ(よだれかけ)に見えないようなスタイが欲しいと聞いて、デザイン性の高いものをつくることにしました。041プロジェクトの一環なので、とにかく当事者目線を大切にすることに重きを置きました。
デザイン性の高い「スタイにもなるエプロンドレス」
開発にあたっては、プロトサンプルをつくり、実際に着てもらって、着心地であったり、保護者の方の着せやすさであったりをヒアリングして、子どもたちへの寄り添いを大切にしました。
スタイにもなるエプロンドレスは、ある1人の女の子を起点に開発した商品なので女の子っぽいデザインですが、お客様からのお問い合わせを受け、2020年4月には、男の子用スタイも発売しました。
スポーツウエアのような雰囲気ですが、 後ろが空いている状態なので、あくまでも重ね着をするのが前提です。前面に吸収性の高い素材を使用しており、機能性を兼ねたファスナーをつけ、見た目のデザイン性も大切にしています。
アパレルの感覚を大切に、自由な発想で商品をつくっています」
男の子用スタイはまるでスポーツウエアのようだ
商品を実際に見て、今後、スペシャルキッズのファッションの選択肢が増えていくきっかけになればいいと強く感じた。