よだれかけに見えないスタイ 「特別な子どもたち」の外見ケアに込められた思い

imagenavi/Getty Images


家族写真の撮影で笑顔を残す活動


また、このようなプロダクトだけでなく、スペシャルキッズの外見ケアに関するさまざまな活動も存在している。そのうちの1つに、理学療法士の安田一貴さんが主宰する、病気の子どもや障害児たちの家族写真を撮影する活動、「笑顔の向こうに繋がる未来プロジェクト」がある。

安田さんは、医療的ケアをしながらの生活で、なかなか家族写真を撮ることが難しいご家族に、理学療法士の知識を活用しながら訪問スタイルでの写真撮影(デリバリーPLAY&PHOTO Studio)を提供している。撮影では、無理のない姿勢や負担をかけないやり方で工夫を凝らしているという。安田さんはこう語る。

「写真自体は、趣味で始めたんです。JICA青年海外協力隊のボランティアに参加し、ウズベキスタンの小児がん専門の小児病院で2年ほど支援活動をしていました。そこで自分で何か特別にできることはないかと考え、家族写真の撮影を始めたのがきっかけでした。

医療制度が十分に整っていない国だと、どうしても『小児がん=治らない病気』という流れになってしまうので、どうしても限られた時間を家族でどう過ごすのかということが重要になってくるんです。そんななかで少しでも何かを形に残すことができたらと、家族写真を撮り始めました。帰国してからも、日本でもできることはないかと少しずつ活動を始めたんです」

安田さんは活動を始めて3年間で、延べ500組ほどの家族写真を撮影したという。家族写真(下)を撮ってもらったという重度の障害児を抱える永峰玲子さんは次のように語る。

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大田原症候群のお子さんとの家族写真。写真提供:永峰玲子さん

「街のスタジオでは受付時間が決まっていたり、撮影しているうちに子どもが寝てしまったり、撮影中もケアをしなくちゃいけなかったりして、とにかく気をつかってしまいます。

でも、出張撮影なら、普段のリラックスした状態で撮影に臨めるし、安田さんの奥さまが保育士さんで、ご夫婦で撮影を進めてくださるので、障害があっても本当に自然な笑顔が写真に残せるというのが、このプロジェクトのとても良いところだなと感じています」
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文=石嶋瑞穂

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