チャーミングケアとは、病気や障害のある子どもの外見上のケアやメンタルケア、そしてそれに寄り添う保護者に対するケアを指す言葉だ。
2016年5月に私の息子が小児白血病になったことをきっかけに、診療を通じたさまざまな課題にぶつかった経験から、闘病生活に彩りを与えるグッズを開発したり、「チャーミングケア」に関するポータルサイトを立ち上げた。
成人患者に対しては「アピアランスケア」と言って外見上のケア(治療の副作用による脱毛、薬によるむくみなど)の重要性が浸透しつつある。しかし、小児患者に対してはほぼそういった感覚が浸透しておらず、すべて「家族看護」として賄われ、名前すらついていなかったのだ。
こうしたケアの必要性が知られるようになれば、病気や障害のある子どもたちや家族のさまざまな心模様をケアする重要性が認知されるのではなかろうか。そう考えて、子どもと家族の笑顔を担保し、かわいい、かっこいいをごく当たり前に追求できるよう「チャーミングケア」と命名したのだ。
とはいえ、私自身は医療者ではないので、何か参考になるケアはないものか調査した。その結果NICU(新生児特定集中治療室)の看護師たちが広く学んでいる「ファミリーセンタードケア」という考え方に行き当たった。
NICUとは、生まれて間もない赤ちゃんが入院する場所だ。赤ちゃんの入院や治療は、多くの場合両親にとってストレスを感じやすく、赤ちゃんが多くの時間を共に過ごす家族へのケアは赤ちゃん自身のためなることから、ファミリーセンタードケアという考え方が重要とされる。
そこで私は、子どもの生育を時系列に追いながら、どんなケアを私たちは経験してきて、そしてどんなケアを望んでいるのかについて、チャーミングケアのメンバーである石嶋瑞穂(代表理事)、奥井のぞみ(理事)、岩倉絹枝(理事)を中心に、疾患別SNSケアランドの運営者、在宅医療事務アウトソーシングサービスを提供するクラウドクリニックからNICU勤務経験のあるスタッフらも加わり、計6名で座談会を行った。
「産後ケア」はいったい誰の管轄なのか
ウェブ座談会の様子
座談会に参加したメンバーの共通点は、それぞれの子どもがNICUへの入院を経験していた点だ。
まず話題に上がったのは、産前に想像していた子どものいる世界と、実際子どもが生まれた後の世界にギャップがあるということだった。そんな戸惑いを感じている母親に対するケアが必要だと感じていた。
例えば、私は、早産での出産に加えて、未熟児ゆえの疾患や先天性の心疾患が子どもに見られたため、出産後すぐに別の病院に子どもが搬送された。私はまだ産後で動きにくい体ながらも「我が子のため」に子どもの入院先に毎日通うことに。直接与えられない母乳を毎日搾乳し、約1ヵ月間、片道2時間弱かかる病院に通い続けたのだ。
子どもに対するケアは病院がしてくれる。けれど、母親である私へのケアはほぼ範疇になかったような感覚で、いわゆる産後ケアらしきものがあったかどうか記憶にすらないのだ。
子どもが退院してから、たまたま知り合いの助産師さんが新生児訪問に来てくれるようになり、少しずつ心に留めていた話をできるようにはなったのだが、それまでは、ふつふつとした思いを胸にしまって過ごしていたと座談会で話した。