そんな中、新たな助産師たちの動きもある。大阪市在住の岸畑聖月さんが代表を務めるWith Midwifeだ。
助産師の活躍の場を、病院から企業へと広げ、女性を中心としたすべての社員が健やかに安心して働ける会社づくりを、助産師の持つノウハウで支援するものだ。
具体的には、企業の中で、顧問助産師が社員の健康や女性のキャリアをサポートする。
加えて社員やそのパートナーが妊娠した場合には、必要であれば、自宅におけるサポートなど、産前から家族をトータルケアする新しい試みだ。
岸畑さんはこう語る。
「看護系医療職の就職難という時代背景を受けて、助産師として本来の仕事ができず、資格だけを持っている助産師の数は実に全体の7割近くいるとも言われています。
その一方で、産後うつやネグレクト、虐待といった問題は後を絶えません。
ではどうしたらいいのかと考えた時に、助産師の役割を病院だけではなく企業に視野を広めたらいいのではないかと思ったんです。
医療職なので、ビジネスマインドの面で初めは不安もありましたが、誰のための事業なのかを考えた時、お母さんやお子さんへの寄り添いのケアを、もっと手厚くしたいというところに回帰してくのではないかと考えています」
岸畑さんは、この事業を大阪を皮切りに全国に広げていきたいと語り、母親だけでなく父親へ向けたイベントなども精力的に企画開催している。
座談会でも話題に上がったのだが、産後ケアに関して、家族からのケアはとても重要だ。「妊娠出産は病気ではない」かもしれないが、ひとりの命を宿し産み出す命がけのライフイベントであることを、家族で認識する必要がある。
戦後の産前産後ケアは「産婆さん」が一手に請負っていた。しかし時代が変わり、助産師が病院に所属するようになると、家に帰ってからのケアがどうしても手薄になり、「母親としてできて当然、乗り越えられて当然」という、どこからともなく聞こえてくる無言の重圧のような感覚を、どうやら多数の女性が感じているようだ。
真面目に必死に過ごす人ほど、産後うつや体調不良に陥りやすい傾向があることも座談会の意見交換などで実感できた。
そこに子どもに産まれながらの障害や病気があると、なおのこと見えない重圧は重いものとなる。
チャーミングケアの考える、子どもの外見ケアやメンタルケアやその家族のケア。
一番社会に声が届きにくく顕在化しにくいのが、実は「家族のためのケア」ではないかと今回の座談会や取材を通して感じた。
社会として何ができるのだろうか──。
チャーミングケアでは今後も探っていければと考えている。