細田氏はフィツォ氏の姿勢について「ロシアにもウクライナにも、米国にも、中国にも、欧州連合(EU)にも八方美人的に良い顔をする全方位外交を基本としています」と説明する。同氏によれば、フィツォ氏には、スロバキア向けのEU補助金を凍結させないため、EUとの関係を決定的に悪化させたくないという判断が働いている。EUに良い顔をするために、ウクライナのEU加盟は妨害しない。一方、ロシアに良い顔をするためにウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟については「第三次世界大戦につながるため、(NATO加盟の)提案があった場合はスロバキア議会内で批准拒否を訴える」と語っている。
細田氏は「結局、フィツォ氏は、スロバキア内政が優先であって、スロバキアとしてどのように欧州情勢に関与・貢献していくかという俯瞰的な戦略視点を持っていません。こんな安易な姿勢は、スロバキアの欧州や国際社会での評判を貶める危険性をはらんでいます」と語る。
世界は今、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・ハマス衝突及びイランとの緊張、中国による東・南シナ海などでの膨張主義、国連の機能不全などによって戦後秩序が崩壊状態にある。来年1月、「米国ファースト」を掲げるトランプ政権が再び誕生すれば、この動きはさらに加速するだろう。スロバキアのフィツォ氏のような極端な内政重視はともかく、どの国も国際社会での生き残りをかけて必死になっている。「世界のグローバル化」が唱えられた時代はどこに行ってしまったのか、フィツォ氏のような「自国ファースト」を唱える人物が次々と登場するかもしれない。
細田氏は「対ウクライナ国際支援の停止やキーウの頭越しの対ロシア宥和策などによりウクライナが降伏せざるを得なくなった場合、ウクライナ現政権の崩壊やロシア軍のウクライナ全土駐留が現実味を帯びます」と指摘する。「ロシア軍がウクライナに駐留すれば、隣接するスロバキアやハンガリーは、ルーマニアやポーランドとともにNATO軍とロシア軍間の最前線になるでしょう。その際、フィツォ氏のポピュリズム外交が極端な親ロシア融和傾向を帯び、NATOやEUの結束の障害になる可能性もあります。目先の視点に基づくポピュリズムのつけにより、将来的に高い代償コストを払わざるを得なくなるでしょう」
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