在米日本大使館のテイラー・スウィフト異例声明、ザワザワする外交官たち

Photo by Graham Denholm/TAS24/Getty Images for TAS Rights Management

ワシントンの日本大使館が2月2日、X(旧ツイッター)で歌手のテイラー・スウィフトさんについて異例ともいえる声明を投稿した。スウィフトさんは当時、10日まで東京でコンサートを行う一方、11日に米ラスベガスで行われるNFLスーパーボウルに応援に赴くとみられていた。スウィフトさんがスーパーボウルに間に合うかどうか、ファンの間で大きな関心事項になっていた。

日本大使館は、飛行時間が12時間、時差が17時間あるとして、「コンサート終了後に東京を出発すれば、スーパーボウル開始前に余裕をもってラスベガスに到着できると自信をもって宣言(Speak Now)」と投稿した。Speak Nowはスウィフトさんの楽曲名。わざわざ太字表記にしたことで、ファンは大喜びしたという。

このニュースは、あちこちで「異例の声明」として好意的に取り上げられた。同時に、仕事仲間である身内の現職や元職の外交官たちの間にも、ざわめきをもたらした。

現職外交官の一人は「これまでのお役所感覚では考えられない声明ですね」と語る。外務本省や在外公館が民間人にかかわる場合、外交官たちの頭には必ず、「公平な扱いなのか」「他からクレームが来ないか」という考えが浮かぶという。この外交官は「じゃあ、ほかの歌手の時はどうするんだ、という声が内部から必ず上がります。きっちり仕事をして、できるヤツほどこの点には敏感になります」と語る。

この外交官の場合、在外勤務時代に担当する国で日本人が経営するレストランを紹介しようと試みた。現地の人々と日本をつなぐ架け橋になりたいという考えもあったし、在留日本人を励ましたいという気持ちもあったという。ところが、公館内で「どの順番で紹介するのか」「全部紹介しきれるのか」などの議論が噴出し、結局断念したという。「国民に仕えるという意識を持つ以上、平等や公平について敏感になりますね」という。

別の退官した大使経験者は「そもそも、外務省の権限でもない飛行機の運航に口を出すのは如何なものか」と語る。「東京からラスベガスに向かう便について、特定の航空会社を推薦していると受け止められる可能性だってあります。スウィフトさんが有名人なのはわかるが、やりすぎでしょう」と話す。日本政府は過去、世界的スターのポール・マッカートニーさんについて、薬物所持の経歴などを理由にビザを発給しなかったこともある。
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