その裏にあるのは、「1回目のトライで絶対に完璧に仕上げなければならない」という強固な思い込みだ。
心の奥で「仕事を完璧に仕上げられず、周囲をがっかりさせるのではないか」と恐れており、そこから、仕事を先延ばしすれば失敗する可能性から自分を守れるとの思いが生まれる。「もう少し後でとりかかればベストを尽くせる。でも今じゃない」と頭の中で繰り返し唱えているうちに、先延ばしの悪循環にはまりこんでしまうのだ。
完璧主義者は、「ミスが全くない状態」を絶え間なく追求している。他の人からのネガティブな評価を恐れ、高すぎる基準を自らに課している。したがって彼らは、自分に対して過度に批判的になっている。
しかもこうした人は、自身の完璧主義について、称賛されるべき性質であり、失敗の不安から自分を守ってくれる盾だととらえがちだ。ゆえに、無意識のうちに、完遂させようとしていたはずのタスクの進行を遅らせてしまう。それが数日前、極端な例では数年前から計画していたタスクであってもだ。
その結果、「完璧を目指す」という目標が、必要な行動をとらない言い訳と化し、最終的には停滞につながる。高かったはずの志は、現実化されなかった可能性の山に埋もれてしまう。
完璧主義から生まれるこうした先延ばしグセは、簡単には克服できない習慣になり得る。
自らを過度に責めたり、失敗への恐怖心に飲み込まれたりしないためには、どうしたらいいのだろうか。完璧主義を乗り超え、締切を守りつつ自分のベストを達成する方策を2つ紹介しよう。
1. アイデンティティー崩壊の危機を解決する
学術誌Personality and Individual Differencesに2017年に掲載された研究結果は、自分の能力に対する認識と、実際にできることの間に大きな隔たりがあるときに、先延ばしグセが起きがちだと示唆している。この葛藤は、理想の自分(「こうあるべき」と信じる姿)と、実際の自分(現実の姿)の対立という形で展開される。「完璧な仕事が期待されている」との思い込みから抜け出て、「今の自分にできることで十分であり、自分の価値は本当の自分らしくあることから生まれる」と気づく必要がある。それには、なぜ自分が完璧を追求してしまうのか、根本的な理由を掘り下げることが不可欠だ。