欧州

2024.04.19

英近衛兵の「ヒゲ」解禁 SNS投稿写真に賛否両論

英近衛兵の行進(Sampajano_Anizza / Shutterstock.com)

英王室を警護する陸軍近衛歩兵5連隊の1つ、ウェールズ近衛連隊(ウェルシュガーズ)が今週、隊員にヒゲを生やすことが解禁されたと発表し、新風ならぬ「新しいヒゲの息吹(a breath of fresh hair)」が吹き込まれたと話題を呼んでいる。

「好むと好まざるとにかかわらず、ヒゲはここにある! 第2中隊の隊員たちは今朝、ウェリントン兵舎からバッキンガム宮殿とセントジェームズ宮殿まで行進し、誇らしく衛兵任務に就いた」──ウェールズ近衛連隊第1大隊は16日、X(旧ツイッター)の公式アカウントにこう投稿し、ヒゲ面の隊員の写真を添えた

これに先立ち、英国陸軍は100年間続いた兵士のヒゲ禁止令を撤廃していた。英国防省によるとヒゲ解禁の決定は、陸軍参謀総長のパトリック・サンダース大将はもちろん、最高司令官であるチャールズ国王にも支持されたという。

ただし、以下に示すようにいくつか制約は残っている。

・頬から口元、顎全体にヒゲを生やす「フルビアード」のみ認める
・ヒゲの長さは、2.5mm(グレード1)から25.5mm(グレード8)まで
・ヒゲは頬骨と首の位置で切って整えなければならない
・生えそろっていないヒゲは不可
・派手な染色は不可

賛否両論、気に入らない人が大半?

ソーシャルメディア上の反応は、当然ながら賛否両論だ。しかし、批判的な声のほうが大きいようで、衛兵がむさ苦しく見える、英国軍の「道徳規範」が損なわれるなどの意見が出ている。

近衛兵のかぶる熊の毛皮の帽子にヒゲは似合わないとの主張もある。だが、有名なあの帽子が英国軍に採用されたのは、ワーテルローの戦いでフランス軍を破ってからだという歴史的事実を忘れてはならない。もともと毛皮の帽子は皇帝ナポレオン1世のフランス帝国衛兵の制帽で、「古参近衛隊」と呼ばれた彼らは当時流行していた立派なもみあげと口ヒゲをたくわえているのが普通だった。

さらに、19世紀後半には英国陸軍のすべての階級を対象に、たっぷりした口ヒゲを生やすことと冬季はフルビアードにすることが奨励された。従軍兵士全員に鼻の下のヒゲを剃ることを禁じる規則が導入され、口ヒゲを生やせる兵士はヒゲを伸ばすことを事実上強制された時期もあった。英国陸軍がヒゲ禁止令を出したのは、実は第一次世界大戦中のことである。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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