アジア

2024.04.16 11:00

中国に成長をもたらした「輸出頼み」策、今は通用しない

安井克至
最も重要なのは、当時の世界の市場が中国の求めに容易に対応できたことだ。輸出し始めたころの中国の世界輸出におけるシェアはわずか2%程度だったが、現在では15%を占めており、各国が自国の経済を損なうことなく中国の製品を今以上に受け入れることはかなり難しくなっている。中国が25年前と同じ戦略をとれる状況にはない。

世界は中国からの輸出の受け入れに否定的であることがますます鮮明になっている。米国は2018年と2019年に中国製品に高い関税を課した。現在はEVやバッテリーなどへの追加関税を検討している。欧州連合(EU)は域内市場での中国製の安価なEVのダンピングに不満を募らせており、報復関税を検討中だ。

英国は、国内にあふれる中国製のトラクターや建設機械に苦慮している。こうした事態は中国国内での住宅建設の減少によりそれら製品に対する需要が減っているためであることは間違いない。英政府はアンチダンピング調査に着手しており、EVについても問題視している。

ブラジル、インド、インドネシア、チリ、メキシコは、鉄鋼やセラミック、化学製品での中国のダンピングを指摘している。チリは中国の鉄鋼に15%の関税をかけることを検討中だ。インドは中国のボルトや鏡、真空断熱フラスコをダンピング品目に追加。インドネシアは、中国製品が多く流通することで国内産業が危機に瀕しているとして、合成繊維についてアンチダンピング関税を検討している。

全体として、中国の輸出への反発はかなりのものだ。今年に入ってからだけでも、世界中の政府が中国に対し70以上の輸入関連の措置を発表している。2021年と2022年に取られた措置は50だった。

明らかに、物事は25年ほど前のようには進まないだろう。ほぼ輸出に頼って経済を成長させるモデルは失敗する。過去に成功した記憶があるため、中国政府の計画立案者や政策立案者はおそらく当面は気づかないだろうが、時が経てば状況を悟るはずだ。その時点で中国政府はまだ続いている不動産危機に再び取り組み、それによって内需を拡大するといいだろう。だが内需の拡大は、発展した経済では解決策ではない。中国の経済はすでに発展している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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