アスピリンが脂肪肝の治療に有望 米ハーバード大学研究

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解熱鎮痛薬のアスピリンを毎日低用量服用することが、一般的な肝疾患の治療に有効である可能性が、最新の研究で示された。

代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、肝臓に脂肪が蓄積し、機能に影響を及ぼすことを特徴とする。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とも呼ばれ、一般に2型糖尿病や肥満などの要因と関連しているが、飲酒とは無関係に発症する。

米国では成人の3分の1近くが肝臓に脂肪を蓄積しており、約2~5%はすでに炎症や肝細胞の損傷を引き起こしている。脂肪肝は「沈黙の病」と呼ばれることもあり、脂肪が蓄積し始めてから症状が出るまでに数年かかることもある。その症状には、疲労、体重減少、虚弱、かゆみ、皮膚や目の黄変などがある。肝硬変のような回復不能な肝障害が生じることもあり、重症化すると肝不全を引き起こし、移植手術以外に適切な治療法がない場合もある。

脂肪が蓄積することによって肝臓が損傷を受け始めると、それを回復させるための承認された治療法はないが、コレステロール値を下げたり、体重を減らしたり、血圧や糖尿病を制御するための薬物療法など、生活習慣の改善が有効な場合もある。

米ハーバード大学医学部はこのほど、低用量のアスピリンを毎日服用することが脂肪肝の治療に有効かどうかを検証するために臨床試験を行った。医学誌「米医師会紀要(JAMA)」に掲載された今回の研究では、18~70歳のMASLD患者80人のうち40人に毎日アスピリンを投与し、もう一方の40人には偽薬(プラセボ)を投与した。いずれのグループにも、投与されている錠剤が偽薬かどうかは知らされなかった。参加者は、試験開始時と錠剤投与開始から6カ月後に肝脂肪量を測定した。その結果、アスピリンを投与された参加者の肝脂肪は平均で6.6%減少したのに対し、偽薬を投与された群では平均3.6%増加していた。他の肝機能検査でも、アスピリンを投与された患者には改善がみられた。

論文の筆頭著者であり、米ハーバード大学医学部で消化器病を専門とするアンドリュー・T・チャン教授は次のように述べた。「米国では成人の3分の1近くがMASLDに罹患していると推定されており、同疾患の合併症として最も恐れられている肝硬変や肝がんへの進行を予防する上で、アスピリンは魅力的かつ経済的な選択肢となり得る」

肝臓専門医で、論文の共同筆頭著者を務めた同大学医学部のトレーシー・G・サイモン講師は「肝脂肪、炎症、肝線維症に関する複数の非侵襲的な血液検査や画像検査はすべて、アスピリン投与が有効であるという同様の結果を示した」と説明。これらのデータを総合すると、アスピリンがMASLD患者に有効である可能性が高いと述べた。

研究者らは、アスピリンが炎症を抑え、脂肪代謝にも影響を与えることで、肝脂肪を減らす働きをするのではないかと考えている。ただ、この結果が多くの人に当てはまるかどうか、また肝脂肪に対するアスピリンの効果が長期的に持続するかどうかについては、さらなる研究が必要だと強調している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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