CDCの定義では、体格指数BMIが30以上の人は肥満だ。もっとわかりやすく言うと、身長175cmの男性なら体重92g、身長167cmの女性なら体重84kgで、BMIがおおよそ30を超える。米国では40%の成人がこの基準を上回っているのだ。
ただし残念なことに、健康を巡るこの危機はあまり認識されていない。肥満になると、血圧が上昇し、アテローム性動脈硬化(余分なコレステロールがたまって血管が狭くなったり詰まったりする状態)を引き起こして心臓発作や脳卒中、心不全を招く。米国では、心疾患が依然として死因の第1位だ。
とはいえ、それは氷山の一角にすぎない。肥満は2型糖尿病の原因であり、2型糖尿病は腎臓病や下肢の切断、失明を引き起こす。ウェストバージニア州、アラバマ州、ルイジアナ州などでは、肥満を原因とする2型糖尿病が広がっており、罹患率はなんと15%に上る。
肥満はこのように代謝に影響を及ぼすだけではない。肥満の人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にもかかりやすい。さらに、体重が軽めの患者と比べて入院する確率も高く、死亡に至りやすい。
そればかりか、肥満になるとがんの発症リスクも上昇する。乳がん、すい臓がん、甲状腺がん、肝臓がんを含む13種のがんは、肥満と関連している。
米国では、肥満による医療制度への負担が推定でおよそ2600億ドルに上っている。肥満はいまやエピデミックと呼べるほどに拡大しており、早急の対応が必要だ。とはいえ、そう意識している人がいるのかどうかは疑わしい。肥満は多くの疾患の根底にあり、予防可能な死因のトップであるにもかかわらず、誰もがこの状況をただ受け入れているように思える。
しかし、こうした肥満の問題に立ち向かうために今すぐできることがある。まずは、保険会社が率先して、栄養指導や薬物療法にかかる費用をすべて補償する必要がある。現時点では、カバーされるかどうかは加入者のタイプによってまちまちだ。