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2024.04.11

小型で低消費電力のFPGA、PC界の新概念「AI PC」を支える技術

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「AI PC」というコンセプトが聞かれるようになって数年たつが、2023年後半にAI処理能力の高い新世代のプロセッサが登場し、マイクロソフトがすべてのパソコンにCopilotを統合したことで、AI PCをめぐる話題は急増した。

しかし、パソコンをインテリジェント(知的)にするには、ニューラルネットワークモデルを動かすだけではなく、周囲やユーザー(あるいは複数ユーザー)のコンテキストを意識するように作る必要がある。

このためには、センサー、ネットワーク情報、ユーザー情報の利用、さらには常時オン状態で定常的に機能するための低消費電力化が必要だ。これはFPGA(Field Programmable Gate Arrays)の能力を活用する千載一遇のチャンスだ。

コンテキストアウェアネス

コンテキストアウェアネスとは、与えられた時間に与えられた環境を理解し、適応する能力のことを指す。これは人間には生まれつき備わっているものだが、電子デバイスにとっては新しく、かつ重要性が高まっている概念だ。

パソコンメーカーなどの各企業は、イメージセンサーから得た情報を使ってパソコンのセキュリティを強化するAI技術をすでに開発している。

たとえば人物検出、顔認識、アテンションの検出、脅威の監視などによって、サインインやパソコン不使用時のロックが可能になり、権限のないユーザーや第三者がユーザーの肩越しに覗き込むようなセキュリティの脅威を検出することができる。

しかしそれで終わりではない。モバイルパソコンは、あなたが家いるのか、オフィスにいるのか、それともレストランにいるのかという情報を知ることで、利用できるネットワークと周辺機器のアクセスを許可すべきかを決定し、セキュリティレベルを適切に設定できるはずだ。インテリジェントPCは、AIエージェントを使って、環境(温度、照明、音楽など)をユーザーの好みやニーズに合わせて調節することもできるだろう。

結局のところ、インテリジェントPCを作るには、AIモデルを実行させて生産性アプリケーョンを改善する以上のことが必要になるのだ。

奥の深いセンサーの世界

そこでセンサーの出番だ。パソコン、特にモバイルパソコンは、システム温度の管理や、画像や音の検出などのために一定レベルのセンサーをすでに備えている。

画像と音のセンサーからだけでも、人物やその他の物体の認識や、ユーザーおよびその近くにいる人々の識別と認証、ユーザーの行動検知、ユーザーの健康状態の認識(そう、心拍数や体温もわかる)、環境の空間次元の認識とその環境内の物体の検知、環境そのものの識別など、驚くべき量の情報が得られる。

これは、センサー技術の継続的進歩によるものであり、他の多くの電子プラットフォーム同様、これからさらなる環境情報を収集するために、追加のセンサーが統合される可能性は高い。
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翻訳=高橋信夫

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