また、この処理は、進化を続けるAIモデルや、さまざまな利用事例や利用体験に適応する必要もある。そこで、低消費電力で駆動するFPGAの出番だ。
デル、レノボ、LGなどを顧客にもつラティスセミコンダクターは、業界をリードする低消費電力のCrossLink-NXシリーズや、高レベルのセンサー処理も可能な汎用FPGAであるAvantaなど、さまざまな半導体製品を開発する米国企業だ。
ラティスのCrossLink-NXは、行列乗算に適したデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、オンチップメモリー、さまざまなI/O構成に適応可能なよう高い柔軟性をもつファブリックなど、複数の特徴を持ち合わせる製品だ。そのサイズも小さく、よりセンサーに近い位置に設置することも可能だ。
さらに、並行処理を活用することで、ラティスのデバイスはわずか150MHzで動作することが可能で、消費電力は数ミリワットしかなく、常時オンの状態に適した設計となっている。電力の消費が大きいメインプロセッサーの代わりにセンサーに関する処理を行うことで、大幅な消費電力の低減が可能だ。
ユーザーが画面を見ていないときや誰かがユーザーの後ろを歩いていることをセンサーが認識し、その情報を受け取ったインテリジェントPCが自動的に画面を暗くすることで、さらなる消費電力の低減とセキュリティ強化が可能になる。また、そうしたセンサーからの情報は、ユーザーが居眠りをしたり、目を細めて画面を見るのに苦労している時に、画面を自動的に明るくするなど、よりよいユーザー体験のためにも用いられる。
これらはCrossLink-NXとAIモデルが連動することで可能になったユースケースのごく一部であり、新しいセンサーアプリケーションは今も開発されている。
ラティスの製品は、異なる製品構成、新しいAIモデル、新しいデータ標準、さらには異なるインターフェースにもハードウェアを変更することなく適応できるよう、複数のプログラム可能な機能を持ち合わせている。
これの最も優れた点は、ラティスのFPGAが使用された他のPCで実現された様々なイノベーションを、同じくラティス製FPGAを使用する他のPCが享受することが可能であるという点だ。
ユーザーのアテンション状態の検知は、自動車で用いられているドライバーモニタリング技術に似ている。政府向けアプリケーションでも病院向けアプリケーションでもセキュリティ制御は似通っている。画面の輝度制御は、商用照明の輝度制御に似ている。そしてセキュリティ監視システムは、商用セキュリティシステムから直接持ち込まれたものだ。
センサーの応用はほぼ無限であり、革新的な企業はセンサーとセンサーデータの新しい使い方を見つけるだろう。中でもユニークな利用の1つがユーザーインターフェースで、VRヘッドセットでは一般的なジェスチャーによる制御は、将来テレビ、パソコンなど他の消費者製品でも普及する可能性が高い。
インテリジェンスへのフォーカス
AIがバズワード化する一方で、製品のインテリジェンス化はあらゆるプラットフォームにとって究極の目標だ。マルチギガヘルツで動くメインのプロセッサは、PCが必要とする処理のすべてをこなすだろうが、それは性能の効率的な利用方法であるとは言えない。また、莫大なバッテリー消費量を踏まえると、有意義なユーザー体験を提供するとも思えない。
より知的なソリューションを作り出すためには、システム全体の性能、効率、およびセキュリティを改善するハイブリッドなアプローチが必要である。そして、そのAIおよびインテリジェンスの分野における進化を可能にする基盤技術の1つがFPGAだ。
これまでFPGAはごく少数の特化した応用に用いられるニッチな技術と見られてきたが、高性能、高機能に加えて、小型、低消費電力という特徴に焦点が当てられ注目されるようになった。FPGAはフレキシブルであり、異なるセンサーへの適合といった変化する要求にも対応できるので、より高度なインテリジェントPCやその他の電子プラットフォームのための、コスト効率も電力効率も高いソリューションの1つになるだろう。
(forbes.com 原文)