火星の全球温暖化を提唱
現在の火星の凍結乾燥した砂漠環境よりも温和な気候になるように気温を上昇させるために、火星で製造されるフロン類の混合物を放出することを、ズブリンは提唱している。皮肉なことに、これらのフロン類は、地球では破壊されたオゾン層の修復に配慮して数十年前に使用禁止になったのと同じ種類のものだ。だが、火星で意図的に全球温暖化を誘発すると、惑星全体の気温が上昇し、古代の水圏が再び活性化されると、ズブリンは指摘する。
「水が氷や永久凍土から溶け出して、小川や川や湖に流れ込み、蒸発して雨や雪となり、あらゆる場所に降り注ぐ」とズブリンは続ける。「先駆的なシアノバクテリアと原始的な植物が約1ミリバールの酸素を生成し、高等植物が火星全体に伝播できるようにする」
その結果、気候がより温暖になると同時に、二酸化炭素の大気が濃くなると、圧力が供給され、宇宙放射線量が大幅に減少するとズブリンは記している。
そうすれば、火星表面のレゴリス(砂状物質)に強く、地球上よりもはるかに高い効率で光合成を行うことができる植物が、共生細菌(相互に作用し合う状態で生息する細菌)とともに火星全体に放たれる。
「このような生物系を利用すれば、野外で人間や他の高等動物の生命を維持するのに必要な120ミリバールの酸素を、約300年で作り出すことができるだろう」とズブリンは記している。
火星の鉄は容易に利用できるはず
火星の自然の景色が赤いのは、大量の酸化鉄(錆びた鉄)が存在するからだ。「この錆から金属鉄を得るには、酸化鉄を一酸化炭素と反応させるだけでよい。これは地球で紀元前1500年頃から行われてきた方法だ」と、ズブリンは記している。「火星の水を電気分解して水素を生成し、酸化鉄と反応させて金属鉄と水を作り出すことも可能だろう」
エネルギーについてはどうだろうか。
火星の文明のエネルギー基盤は、原子力にする必要がある。火星ではウランとトリウムが広く検出されているものの、火星の大規模な植民地を支えるエネルギー技術は核融合発電だと、ズブリンは予測している。