1万人の1%より300人の90%を。モンベル発「非集客型」イベントの真意

SEA TO SUMMITの発案者、モンベル会長の辰野勇氏(左)と鳥海山大会の実行委員会のメンバー(写真提供:モンベル・茂田羽生)

「地元の方にも遊んでもらわないと、地元の自然は守れない」

SEA TO SUMMITの運営には開催地域の人たちに積極的に関わってもらう。でも同じように「地元の方にも遊んでもらわないと、地元の自然は守れないとも思っている」。
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「川が汚れるのは、川で遊ばなくなったから。自分や自分の子どもたちが川で遊んでいたら、川にゴミを捨てようとは思わないですし、“ゴミがいっぱいあるからきれいにしておかないとね”という意識につながっていくはず。自然を守るためには、地元の人に地元の自然で遊んでもらうことも大切なんです」
写真提供:モンベル・茂田羽生

写真提供:モンベル・茂田羽生

県外からの参加者だけでなく、開催地域の人たちが自らエントリーし、カヤックや自転車、登山の楽しさに触れるなかで、自分たちの町の自然環境の豊さや問題点に気が付いていく。今では参加者の半数近くが地元の方々だという。親が自然のなかで遊ばなかったら、きっと子どももそこでは遊ばない。自然を守るためには、後世へつなげていくことが不可欠だ。

しかし、町の魅力に気がつくこともあれば、問題点を目の当たりにすることも。

「開催場所によっては大会前日にビーチクリーンを実施していますが、元々は参加されるお客さんが海辺にゴミが落ちているからと、自発的にやっていたことがきっかけではじまった活動でした。でも、鳥取県の皆生・大山大会では、1ヶ月前くらいに地元の方たちが地元の参加者を集めてすごいきれいにしてくれているんです。大会前日にビーチクリーンをする必要がないくらい」
写真提供:モンベル・茂田羽生

写真提供:モンベル・茂田羽生

そこは河口で、日頃から釣り糸などのゴミがよく落ちている場所だというが、SEA TO SUMMITの開催がきっかけで、“せっかく来てくれるんだから美しい海を見てほしい”という想いが地元住民のなかで生まれ、「これが日常的な意識につながっているのではないか」と佐藤さんは期待を込める。
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人間の意識を変えるのはそう簡単なことではないが、そこに住む人たちの考え方を変えていくほどの力がSEA TO SUMMITにはあるのだと思う。
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写真提供:モンベル・茂田羽生

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