1万人の1%より300人の90%を。モンベル発「非集客型」イベントの真意

SEA TO SUMMITの発案者、モンベル会長の辰野勇氏(左)と鳥海山大会の実行委員会のメンバー(写真提供:モンベル・茂田羽生)

なぜここまでファンが増えたのだろうか? もちろん、参加者がアウトドアスポーツ好きということは前提としてあるだろう。
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しかし、筆者もSEA TO SUMMITに参加したからこそ実感していることがある。それは、海があり、里があり、山があり、それらの生態系が循環しているからこそ、わたしたちが恵みを受けて豊かに暮らしていけるということ。

SEA TO SUMMITを通してそんなことを深く考えさせられ、自分が遊ぶ土地の魅力、抱えている課題を含めて知ることによって、「この自然を守りたい」「応援したい」という気持ちが芽生える。その結果、その地域が好きになり、別の目的でも遊びに行きたいと思うようになった。

ただ人をたくさん集めて、アウトドアスポーツを楽しんで終わりじゃない。これこそアウトドアスポーツイベントの〈新しいかたち〉であり、後世を見据えた持続可能な取り組みだと筆者は思う。

地域内で“横”のつながりが生まれるきっかけに

写真提供:モンベル・茂田羽生写真提供:モンベル・茂田羽生

SEA TO SUMMITは開催地域のファンを増やすことにも一役買っているが、実はもうひとつ嬉しいことも起こっているそうだ。
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「それぞれ開催地域には、サイクリング協会やカヌー協会、山岳会などいろいろな団体があります。でも、これらの団体が横に繋がることはなかったんです。たとえば「ツール・ド・大山」という大会があったら、サイクリング協会さんが主催となってイベントをやられる。そこにカヌー協会は携わりません。でも、SEA TO SUMMITをやることによって、地域にあるそれぞれの団体の横のつながりが生まれました。これによって、いつも自転車に乗られている方がたまにはカヤックやってみようか、となるわけです」


参加者を海上で見守る、地元の漁師さん。有事の際にすぐに救助できるよう待機してくれている
カヤック、サイクリング、登山。SEA TO SUMMITは海から山をつなぐため、地域のなかで“横のつながり”がないと開催できない。

もちろんモンベルのスタッフも関わるが、基本的には開催地域でそれぞれの団体が実行委員会を立ち上げて一丸となって運営する。これにより、海しか知らなかった人が山の良さを知ったり、自転車しか乗らなかった人がカヤックの楽しさを知ったりと、“地域の内側から活性化”することにもつなげることができた。これは「開催の全地域に言えること」だと、佐藤さんは胸を張る。
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写真提供:モンベル・茂田羽生

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