シューズ開発チームを率いるサイモン・アトキンスによると、スポーツシューズのほとんどが男性の足型でできているが、同社では、女性の足の形や動きに合わせた製品をつくっている。
「女性の足は男性よりも柔軟でつま先立ちすることがあります。そこでインソールを2ミリ厚くしたり、アウトソールのつま先部分の柔軟性をよくしたりといった工夫をしました。また、床への着地についても男性と異なることがわかったので、かかと部分のパッドをわずかに調整しました」
こうした細かいテクノロジーを詰め込んだシューズは、アンバサダーやウェアテスターによるテストを重ね、最終的には少し軽量化してより速く走ることにも役立つ製品となった。
今回のウルトラマラソンの走行中にも、モーションキャプチャカメラなどを使って天候によって変化するコースの地面の反力や、時間の経過とともにアスリートのパフォーマンスがどのように変化するかといったデータを計測。今後の研究に役立て、2025年にはゲストへの販売とテストを実施する予定だ。
30人の研究者がサポート
研究チームには、カナダスポーツ研究所と、スポーツ栄養学やスポーツ医学などスポーツに関わる世界クラスの研究者30人が参加。約1年半かけて研究し、6日間のレースでは数十万のデータを分析した。研究では、世界記録を更新したカミーユ・ヘロンが高い自然脂肪酸化率を持っていることが判明。シャンテルは「これが彼女を突き動かす原動力の一部。このデータのおかげで、彼女はレースとレースの間にそれほど多くの炭水化物を消費する必要はない、というアドバイスをすることができました」と話す。
ウルトラマラソンランナーのカミーユ・ヘロン。ウェアのポケットに水筒を入れている様子もうかがえる
また、女性ウルトラランナーは男性ウルトラランナーに比べて耐疲労性に優れているのかを調べるため、VO2 Max(最大酸素摂取量)テストを実施。心拍数や乳酸値、効率性なども測定した。彼女たちのほとんどが、初めてこのテストを受けた。
その結果、2時間走った後でもアスリートたちの心拍数や受けた運動量の評価は変わらなかった。研究チームはこのことに衝撃を受けたという。その理由は、彼女たちが最も効率的な動きをしているから。特定のペースで歩いたり走ったりすることは、エネルギーバランスを保つうえで非常に重要だということがわかった。