動脈中のマイクロプラスチック、心臓発作と脳卒中のリスクを高める可能性

Shutterstock.com

血管に入り込んだわずかなプラスチックが心臓発作や脳卒中、死亡のリスクを高める可能性があると、新たな研究で警告されている。

動脈内にマイクロプラスチックがあるとはどういうことか。昨年、別の研究でヒトの心臓からマイクロプラスチックが検出された証拠が示された。医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』にこのほど掲載された最新の研究ではさらに一歩踏み込んで、私たちの体内に侵入する化学物質を含んだ小さなプラスチック片が心臓の健康にどう影響するのかを探っている。
SEE
ALSO

サイエンス > 気候・環境

マイクロプラスチックが人の心臓から初めて発見、汚染の影響が明らかに

主にイタリアの研究者で構成される研究チームは、無症候性の頸動脈疾患の治療で手術を受けた患者から摘出した動脈を詰まらせるプラークを検査した。首の両側にある頸動脈は脳に酸素と血液を運ぶ主要な血管であり、この血管が狭くなると脳卒中のリスクが高まる。

研究者らは切除された脂肪質(アテローム)を調べ、さらに被験者257人を術後3年近く追跡調査。その結果、頸動脈プラークにマイクロプラスチックが確認された人は、そうでなかった人に比べて、致死的ではない心臓発作や脳卒中の発症、何らかの原因での死亡が約4倍多いことがわかった。マイクロプラスチックを含んでいたプラーク組織はまた、炎症が増えている徴候を示していた。

規模が小さいながらもこの研究はマイクロプラスチックと心血管疾患を関連付けた初めてのものとなる。だが論文には、この結果は因果関係を証明するものではなく、喫煙や運動不足などの他の要因が健康状態を左右する可能性があると明記されている。それでも研究者らは、今回の研究結果はプラスチックが健康に及ぼす危険性に関する一連の研究に加わる重要な発見であり、より大規模かつ広範に調査されるべきだと指摘している。

この研究に参加していない米ボストンカレッジの生物学教授であるフィリップ・ランドリガン博士は研究に付随する論説で「本研究に参加した患者に、他にどのような曝露が有害な転帰をもたらしたかはわからないが、プラーク組織からマイクロプラスチックやナノプラスチックが検出されたこと自体、緊急に取り組むべき一連の問題を提起する画期的な発見だ」と指摘した。「マイクロプラスチックやナノプラスチックへの曝露は心血管系の危険因子と考えられるべきか。心臓に加えてどの臓器がリスクに曝される可能性があるのか。どうすれば曝露を減らすことができるのか」と疑問を投げかけた。
次ページ > マイクロプラスチックの体内侵入経路

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事