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2024.03.13

大気中から二酸化炭素を「直接回収」するClimeworks、航空大手と提携

The Climeworks CO2 collector(Getty Images)

大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収する技術を開発したスタートアップ企業Climeworks(クライムワークス)は、スイス・インターナショナル・エアラインズとの提携で大規模なCO2除去のプロジェクトを開始する。

クライムワークスの共同創業者で共同CEOのJan Wurzbacher(ヤン・ヴルツバッハー)によるとともにチューリッヒに本拠を置く2社のパートナーシップは、2020年代の終わりまで7年間続く予定という。ヴルツバッハーとスイスエアのCEOのDieter Vranckx(ディーター・ヴランクス)は、この試みが「航空業界で初めての直接的なCO2回収プロジェクト」だと述べている。

しかし、この契約によるCO2の除去量や、スイスエアがクライムワークスに支払う金額については公表されていない。回収されたCO2の一部は、貯蔵されるのではなく、持続可能な航空燃料の製造に使用される可能性がある。

「当社は数多くの金融業界やサービス業界の企業を顧客としているが、航空業界の顧客は今回が初めてだ。このことは、CO2排出量の多い航空会社が、CO2の直接回収が価値のある取り組みであるという結論に達したことを意味する」と、ヴルツバッハーは述べている。

クライムワークスは、これまでに約8億ドルを調達しており、評価額は19億ドル(約2790億円)に達している。同社は、2021年にアイスランドで世界初の大規模なCO2回収プラントOrca(オルカ)の操業を開始した。この施設は、大型ファンを使って周囲の空気からCO2を吸い込み、水と混ぜて固形化して地下に貯蔵する。オルカは、年間4000トンのCO2を除去することができるが、クライムワークスはレイキャビク近郊にMammoth(マンモス)という年間3万6000トンを除去できる、より大規模な施設を建設中だ。

同社は、スイスエアとの契約に先立ち、JPモルガン・チェースやマイクロソフト、BCG、Stripe、保険会社のスイス・リーとの複数年に渡るCO2除去プロジェクトを発表している。CO2の直接除去は、クリーンテックの中でも急成長中の分野であり、輸送や製造、電力などの業界が化石燃料から脱却する上で、重要な取り組みに位置づけられている。しかし、気候変動の影響を遅らせるためには、年間数千ギガトンのCO2を除去する必要がある。

航空会社などは、植林や風力発電所の建設に関連したカーボンクレジットを長年購入してきたが、CO2の直接除去は、これらのプロジェクトに比べてCO2回収量を正確に測定できると、クライムワークスなどの企業は主張している。
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編集=上田裕資

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