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2024.03.11

ビル・ゲイツらも出資、「CO2を出さない」製鉄企業Boston Metal

(C)Boston Metal

ビル・ゲイツを含む投資家から3億5000万ドル(約520億円)以上を調達した製鉄分野のスタートアップ企業Boston Metal(ボストン・メタル)は、二酸化炭素(CO2)を排出しない「グリーンスチール」でこの分野に革新をもたらそうとしている。

同社の共同創業者のドナルド・サドウェイは「製鉄業界が国だとしたら、第3位の汚染国になるでしょう」と述べている。鉄鋼の生産は、世界のCO2排出量の約8%を占めているが、その主な原因は、鉄鋼を製造する際に大量の石炭を燃やすことにある。現代の暮らしに欠かせない鉄鋼は、世界中で毎年20億トン近くが生産されているが、その製造プロセスのCO2排出量は、2020年時点で年間34億6100万トンにも及んでいる。

そんな中、マサチューセッツ工科大学(MIT)の職をリタイアしたサドウェイは、高炉で石炭を使用する伝統的な製鉄プロセスを置き換えるソリューションを発見した。ボストン社は「溶融酸化物電解(Molten oxide electrolysis、MOE)」と呼ばれるアプローチで、電気を利用して幅広い種類の原料からさまざまな金属や合金を製造しようとしている。同社の重要な技術革新は、鉄を液化するのに必要な高温に耐えられるアノードと呼ばれる金属棒にある。

ボストン社のタデウ・カルネイロCEOは、フォーブスの取材に「当社の技術は、何千年もの間、同じ方程式に基づいてきた産業に革命を起こすものです」と述べている。

欧州のCO2排出に関する罰則の強化や米国のインフレ抑制法の優遇措置に後押しされ、鉄鋼メーカーや新興企業、投資家たちは、環境への害が少なくコストがかからない鉄鋼生産の方法を模索している。ボストン社のアプローチはその方法の1つであり、他の企業も環境に優しい水素ベースのプロセスを開発している。

CO2排出の削減を目標にするボストン社は、鉄鋼大手のアルセロール・ミッタルやビル・ゲイツのブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズなどの投資家から3億5000万ドル以上を調達しており、PitchBookによると直近の評価額は8億6000万ドルに達している。
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編集=上田裕資

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