2030年までに「CO2排出を半減」
「スイスエアは、2030年までにCO2排出を半減させ、2050年までにネットゼロにするという目標を掲げている」とヴランクスは話す。同社は、よりクリーンな航空機へのアップグレードや持続可能な燃料への転換に加え、クライムワークスとのプロジェクトを「目標達成のための重要な要素」と捉えている。スイスエアが、クライムワークスによるCO2除去のトン数について公表していない理由の1つは「直接空気回収(DAC)」がまだ新しい技術であり、最も安価な選択肢ではない可能性があることにある。「今後2年ほどでDACが有望な技術となり、我々の予想以上にスケーラビリティが向上すれば、DACによる削減を増やし、持続可能な航空燃料による削減をより少なくするかもしれない」とヴランクスはいう。
国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、2022年の航空業界によるCO2排出量は、運輸業界全体の12%を占めている。スイスエアの2050年までのネット・ゼロ・エミッション達成という目標は、航空業界全体の目標でもある。
DACは、CO2を1トン除去するのに1000ドルかかり、2000キロワット時の電力を使用すると見積もられている。現状、クライムワークスはCO2回収量の拡大に重点を置いており、電力消費量やコストの削減を優先していないが、ヴルツバッハーによると、いずれも時間とともに効率化される見込みだという。
「我々の戦略は、さらなる技術向上、特にスケールアップとコスト削減に重点的に投資をすることだ。コストを削減するには、まず規模を拡大する必要がある。将来期待されるコスト水準まですぐに下げることはできないことが課題だといえる」と、彼は述べた。
DAC業界には、エネルギー企業やスタートアップ企業が参入しており、競争は激化している。UCLAからスピンアウトし、ロサンゼルスに本拠を置く「Equatic」は、海水のCO2を除去する技術の商業化に取り組んでいる。同社によると、この手法は1トン当たり100ドルと大幅にコストが安く、エネルギー効率も高いというが、技術はまだ初期段階にある。
「1つの技術でこの問題を解決できるとは考えていない。20年後には、複数の技術が確立されているだろう」とヴルツバッハーは語った。
(forbes.com 原文)