食&酒

2024.03.13 15:15

ハワイと広島、ブームの「おまかせ寿司」が繋ぐ意外な「絆」

ハワイはいま、ちょっとしたブームに沸いている。「おまかせ」だ。

「おまかせ」とは、その名の通り、シェフにメニューの選択をお任せすること。任されたシェフは、その日に仕入れた新鮮な食材のなかから選りすぐり、腕をふるう。とくに高級な寿司店では、このスタイルをとる店が多い。

これまでハワイにも「寿司ささぶね」など、いくつか「おまかせ」の店はあったが、それほどポピュラーではなかった。

その潮流を変えたのは、2016年、ワイキキにオープンした「すし匠」だ。中澤圭二大将が、その日の食材を使って「美味しいところを少しずつお出ししていきます」とふるまう江戸前寿司は、瞬く間にハワイの寿司界を変えてしまった。

ハワイ産の食材を、変幻自在に江戸前寿司に昇華させる中澤大将のお手並みは、同店を予約の取りにくい店にしただけではなく、米国本土の寿司好きたちにも「おまかせ寿司」の醍醐味を広めた。

その証拠に、コロナ禍で日本人観光客が激減したハワイでも、「すし匠」の客足は引きも切らなかった。客層の中心はアメリカ本土からの観光客だった。

アメリカ人からの支持の高さを実感したのか、中澤大将はニューヨークへの出店を決意。2023年にハワイからニューヨークへと移ってしまった。ハワイ店は弟子が継いで営業を継続している。

「おまかせ寿司」の店が続々オープン

さて、「おまかせ」だ。その後、すっかり「おまかせ」の手法に慣れてしまったハワイっ子たちが、新たな「おまかせ寿司」をオープンした。その走りが、2022年にワイキキ近くのカパフル通りにオープンした「OMAKASE by Aung(オマカセ・バイ・アウン)」だ。

アメリカ本土で修業したシェフが、ブランド物のキャップ姿で江戸前寿司を握る姿は、日本人には奇異に映ったが、アメリカ人の寿司ファンには「おしゃれなディナー」として受け入れられ、好きなお酒を持ち込んでカウンターで気軽に創作寿司を楽しめるスタイルは一気に広まった。

ちなみにハワイでは、リカーライセンスのない飲食店に自分のお酒を持ち込んで食事をするのは「BYOB(Bring Your Own Bottle)」と呼ばれる。酒代がかからず、安上がりになるので人気が出る傾向にある。「OMAKASE by Aung」もこのスタイルをとっていた。

「OMAKASE by Aung」以来、それからというものハワイには「おまかせ」を謳う寿司店がぞくぞくオープンした。

最近できた店だけでも、元「凛花」の寿司職人が開いた「すし魚神」、ゴールデンポークラーメン系列の「すし久」、ワイキキのメキシカンレストランの奥にできた「梟(ふくろう)」、ワイアラエ通りの「ひひまぬ寿司」、カピオラニ通りの「おまかせby Toshi」、ワードからレストランロウに移転した「@ SUSHI」などなどだ。

ワイキキのど真ん中にある「レストランサントリー」の奥にある寿司カウンター「季和(ときわ)」も、いまはおまかせ寿司の仲間入りをした。
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文=岩瀬英介

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