国内

2024.03.08 10:45

国際女性デーに考える 「漂流妊産婦」の居場所づくり法制化で前進すること

認定NPO法人ピッコラーレ 代表理事 中島かおりさん

妊娠葛藤相談の窓口が増えて分かってきたこととして、支援が必要な妊婦は匿名の相談が多い。そして、つながりがブツっと切れることも多い。1回のコンタクトが最初で最後になる可能性が高い。「おいで」と言ってあげられる場所を持っていれば、目の前の相談にもっと強く関わっていけるのではないか。
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「妊婦さんに、おいで、来ていいよと言ってあげられる場所があると、現場で相談対応されている方々が介入しやすくなるのではないかと思いました。まずは妊婦さんが安心できる居場所につながることで、お母さんと赤ちゃんの命を守る。そんな議論を積み重ねてきました」と胡内さんは語る。

まずは、生まれてくる命を守る。そのために始まった事業であるから、担い手にはいろいろな力を持った人が入るといい。私たち社会的養護のアフターケアの分野にも関係した大切な取り組みだし、一人で支えるには限界があるから、やはり、支える温かな手は多い方がいい。どんどん連携していきたいと思う。
 
こども家庭庁 支援局家庭福祉課 企画調整官 胡内敦司さん

こども家庭庁 支援局家庭福祉課 企画調整官 胡内敦司さん

すでにたくさん傷ついている女性たち


こうした困難を抱えた妊産婦からの相談は私も仕事で受けることがあるが、たいていが、その困難の根っこはすでに妊娠前から存在している。とりわけ家族からの虐待や、性暴力被害などは背景によく見られ、長いこと傷ついた自分をまるっと抱えたまま生きている。自分を信じることも、人を信じることも難しく、トラウマ症状としての3つのF、Fight(闘う)、Flight(逃げる・解離する)、Freeze(固まる)を頻繁に表出する。それは一般的には問題行動、支援拒否、わがままと思われてしまうような言動でもあるのだが、トラウマのメガネをかけて見てみると、これまでの過酷な環境を生き延びるために彼女たちが身につけた術であったのだと理解することができる。

虐待を受けた多くの人が、自分の意見なんて聴かれたことがなかった、選択肢なんて与えられたことがなかったと口にする。だからこそ、すべてを叶えられるわけではないけれど、本人の声を聴くこと、希望や意向を確認しながら進めることは、自分の気持ちを取り戻すためにも大事なプロセスなのだ。時に自分の利益とお腹の赤ちゃんの利益が反発するような事態にも陥るし、本人はパニックや癇癪を起こすこともあるが、一人でやらなくていい、一緒に考えていくよと、辛抱強く繰り返す。
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たくさんのものを奪われてきた女性たちが、新しい命を生み出す時に、あなたは一人じゃない、あなたも大切な人なのだと伝え続けることは、その後の人生においても必要な礎となる。回復への道のりは簡単ではないかもしれないけれど、ぜひ、社会全体で温かなまなざしで見守ってほしいと思う。「育てられないなら産むな」ではなく、「安心して産んでいいよ」と言える社会の方に、私は変化してほしいと願う。

【連載】共に、生きる──社会的養護の窓から見る
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文=矢嶋桃子

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