中国と欧州の関係は、日本として非常に気になるところだが、残念ながら、ミュンヘン会議で日本の存在感は全くといって良いほどなかった。昨年の会議には、林芳正外相(当時)が出席したものの、今年は上川陽子外相の姿はなかった。上川氏は直前の2月、フィジーを訪問していたが、航空機の機体トラブルで帰国が遅れ、同月13日の閣議を欠席した。ミュンヘン会議出席を見送ったのも、「国会軽視」という批判を受けないようにする配慮があったのかもしれない。結局、政治家として派遣されたのは、三宅伸吾防衛大臣政務官だった。閣僚ではないため、基調演説をさせてもらえるわけでもなく、存在感を発揮できなかった。
関係者の一人は「欧州諸国にとって日本はもちろん重要なパートナーだが、意見の食い違いがあるわけではない。日本を引き留める必要性もないから、あえて議論のパートナーに選ぶこともない」と語る。欧州はそれでもいいかもしれないが、日本は王毅氏の出席した場所で「中国を警戒せよ」と発信する貴重な機会を失った。
今や、世の中は軍事力に心理戦や情報戦などを絡めて、相手を自分の思い通りに動かす「ハイブリッド戦」全盛の時代だ。「在米日本大使館のテイラー・スウィフト異例声明、ザワザワする外交官たち」でも書いたが、日本外交において、情報分野の取り組みはかなり見劣りする。SNSによる情報発信も重要だが、こうしたリアルな場での発信の機会ももっと大切にした方が良いのではないかと思う。
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