経済・社会

2024.02.10 07:30

これも平和を維持する手段の一つ、自衛隊員が礼式にこだわる理由

Photo by David Mareuil/Anadolu via Getty Images

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林芳正官房長官は2日、太平洋地域にある18の島国・地域と日本による国際会議「太平洋・島サミット(首脳会議)」を、7月に東京で開くと発表した。最近は、新たな冷戦時代の始まりを迎え、グローバルサウス諸国の取り込みなどを目指す動きが活発だ。日本も、日米韓の協力や日米豪印のクアッドなど少数国間の取り組み(ミニラテラリズム)に加え、各地域の連合体との連携を強化している。

昨年12月にも、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)友好協力50周年を記念する日ASEAN特別首脳会議が都内で開かれた。この会議に携わった政府関係者は「大過なく会議が終わって何よりだった」と息を吐いた。議題はもちろん重要だが、参加国が多くなると、プロトコール(国際儀礼)がどうしても心配になる。基本的な問題のひとつが席順だ。ASEANの場合、議長国が一番の上席に座り、次が次年度の議長国、あとは王族、大統領、首相というようにポストの重み順に席を決める。同じクラスのポストみなら、在任期間が長い方を優先する。

地味な作業だが、間違えると大変な事態を招きかねない。この関係者も過去に携わった国際会議の際、NGOが主催する関連行事で、NGO側の不手際から、席順を間違える事態が起きた。下座をあてがわれた国の代表は激怒し、会議を欠席すると言い出した。日本政府がNGOに代わって謝罪して、何とかその場を丸く収めたという。関係者は「その国を代表しているわけだから、怒るのも無理はなかった」と語る。

2010年11月、韓国は初めて主要20カ国・地域(G20)首脳会議を主催した。議長国の韓国は初の大役に緊張し、前の議長国だったカナダに助言を求めた。カナダ側のアドバイスの一つが、「席順を間違えるな」だった。韓国はG20首脳の記念写真撮影の際、首脳一人一人にエスコート役をつけ、正しい位置に並ぶよう、細心の注意を払ったという。

安全保障ジャーナリストの吉永ケンジ氏(@yk_seculligence)は「外交だけの問題ではありません。軍事の世界でも礼式(礼儀を行うための作法)は重要です。平和を維持する手段の一つと言っても過言ではありません」と語る。防衛庁長官(当時)が1964年に出した「自衛隊の礼式に関する訓令」は、敬礼のやり方から祝賀式や表彰式などでの礼式、礼砲の条件まで詳細に取り決めている。吉永氏は「自衛隊の中で礼式が徹底できないようでは、外国と交流もできません」と語る。自衛官が昇級する際の試験にも礼式は出てくる。
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文=牧野愛博

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