アップル株が4カ月ぶりの安値、「AIブームへの出遅れ」鮮明に

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アップルの株価は2月29日、約4カ月ぶりの安値に沈んだ。投資家は、アップルよりも人工知能(AI)ブームの恩恵を受けやすいと思える同業他社への乗り換えを進めているようだだ。
 
アップルの株価は、S&P500やナスダックが堅調な上昇を見せた29日の市場で約1%下落し、11月7日以降で初めて180ドルを下回った。これに対し、アップル以外の「時価総額1兆ドルクラブ」の企業の5社(エヌビディア、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタ)の株価は、それぞれ0.7%以上も上昇した。
 
マイクロソフトなどの競合が急成長中のテクノロジーに紐づく目に見える収益成長を実現する中、アップルは約10年前から進めてきた電気自動車(EV)プロジェクトを断念すると27日に報じられた。ティム・クックCEOは、2017年に、自動運転技術が「最も重要な根幹の技術であり、すべての人工知能(AI)プロジェクトの母だ」と述べていたことで知られ、今回の株価の下落は、アップルのAIの取り組みに疑問が浮上する中で発生した。
 
S&Pとナスダックの2024年の年初からの2カ月の上昇幅は、それぞれ7%と9%に達しているが、アップル株は同期間に3%下落している。長年、市場全体を上回るパフォーマンスを記録してきたアップル株のリターンは、ファクトセットのデータによると、過去6カ月、12カ月、2年のいずれにおいてもS&Pを下回っている。
 
 一方で、より長期的に見ればアップル株への投資は大成功を収めており、同社株の過去20年間の年率トータルリターンは36%で、同期間のS&Pの年率10%をはるかに上回っている。しかし、2021年から2023年にかけての期間の大半で、時価総額で「世界で最も価値のある企業」だったアップルは、1月にその地位をマイクロソフトに奪われた。この変化は、マイクロソフトの売上高と純利益の成長が、昨年9月期の通期決算で減収減益を報告したアップルを大きく上回ったことによるものだ。
 
クックCEOは28日の年次株主総会で、アップルが生成AIに「かなりの額の投資」をしており、年内により具体的な方針を発表すると予告した。
 
UBSのアナリストのデービット・ボートは今週、アップルが6月に開催される開発者会議で、AIに関する発表を行うと予想していると述べた。アップルはまた、AI分野の逆風に加えて、iPhoneの販売台数の伸び悩みにも直面しており、そのことが株価の重しとなっている。
 
一方、アップルのEVプロジェクトからの撤退を歓迎する声も上がっている。エリック・ウッドリング率いるモルガン・スタンレーのアナリストは今週のメモで、アップルのこの動きは、生成AIプロダクトの開発に人材を集中させることにつながり、同社の「コストの規律」を示すものとして、実際には「全体的に見ればプラスだ」と述べていた。 
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編集=上田裕資

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