だが、ロシア軍がクリミアにいる部隊を守ることができているのは、主にA-50がレーダー探知範囲を柔軟に変えられるからだ。ウクライナ軍がクリミアに設置されたロシア軍の地上レーダーを破壊するほどに、ロシア軍の司令官はA-50を南部の前線にますます接近させることで防空の隙間を補った。
A-50と、随行していたイリューシンIl-22空中指揮機が1月14日に、ウクライナ軍のおそらく米国製パトリオットPAC-2地対空ミサイルを発射したシステムに狙われることになったのは、ますます絶望的な状況になっていたためだ。ウクライナ軍にミサイルで攻撃されたとき、2機は前線から約96kmほど南のアゾフ海上空の狭い範囲で旋回飛行していたようだ。
IL-22は甚大な被害と負傷者を出しながらなんとか基地に戻った。A-50は炎上しながら海に墜落。高級将校数人を含む搭乗していた15人全員が死亡した。
1月の撃墜事件後、ロシア空軍は残りのA-50を守るため、前線から離れた場所に配備するようになった。ウクライナ国防戦略センターは今月初めに「ロシア軍はA-50をロシア国境やベラルーシ方面に配備するようになっている」と報告している。
前線から離れているが、十分ではない。2月23日に新たにA-50がアゾフ海のすぐ東のロシアのクラスノダール地方の上空で爆発し、乗員と戦闘管理者の10人全員が死亡した。
このA-50は攻撃を受けた際、前線から約193km離れていたと伝えられている。これはパトリオットの通常の射程を約48km超えているため、ウクライナ空軍が射程約257kmもある冷戦時代の古いS-200ミサイルを地対空ミサイルとして撃ち始めたという憶測や未確認の報道につながった。