欧州

2024.02.26 09:30

再びロシアは貴重な早期警戒機を失う、生じる「レーダー探知範囲の隙間」

いずれにせよ、ロシア空軍が運用する早期警戒管制機はデジタルシステムを搭載したA-50MとA-50Uの7機と、次世代モデルA-100の1機に減った。これとは別に、デジタル化されていない1980年代のA-50が保管されているが、これらの戦闘能力はいうに及ばず、安全飛行できるかどうかは不明だ。

ロシアにとって問題なのは、約965kmにおよぶすべての前線を監視するには、南、東そして北の3方面に早期警戒管制機を配備する必要があるということだ。3方面をカバーするには、少なくとも9機のA-50を要する。各方面ごとに、1機が監視している間、もう1機は基地に戻り、別の1機はメンテナンスを受ける。

実際、ロシア空軍は乗員の訓練を支援し、機体が定期的な整備を受けられるようにするために、追加の機体が必要だろう。

つまり、A-50を2機撃墜し、昨年のベラルーシでのドローン攻撃で1機を損傷させたことで、ウクライナ軍は実質的にロシア軍がA-50を使って前線全体を監視できないようにした。これによりロシア軍は、どの方面をレーダー探知なしとするかを判断せざるを得なくなった。

ウクライナは各方面でミサイルやドローンを使って深部攻撃を行うため、難しい選択だ。A-50を追加してその厳しい決断を避けることも期待できない。

ロシア空軍は何年もの間、1機しかないA-100の開発とテストを終えようとしていることを忘れてはいけない。外国の制裁で、同空軍はA-100のシステムに必要な電子部品の一部を入手できていない。

自由なウクライナを支援する人々にとって興味深いのは、ロシアが残るA-50を再配備して必然的に航空レーダー探知のカバー範囲に隙間ができたとき、ウクライナ軍がどう出るかだ。その隙間をめがけてドローンや巡航ミサイルで攻撃し、艦船や司令部、兵站拠点、さらには兵器工場や石油施設を狙うのだろうか。

ほぼ間違いなくそうだろう。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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