というのも、マイク・ジョンソン下院議長は先週、ウクライナ支援を盛り込んだ予算案の採決を行わず、2月28日まで下院を休会としたからだ。そうした対応は米国のリーダーシップの失敗の新たな決定的瞬間となった。
下院が再開し次第、2024会計年度の予算案が優先される。議員らは連邦政府の支出を削減するための3月初めという期限に間に合わせようと必死になる。そうなれば、ウクライナ支援は議会の議題から外され、やがてうやむやになってしまうだろう。それこそがドナルド・トランプ前大統領とジョンソン下院議長がずっと望んでいたことだと見る向きもある。バイデン大統領のぶれないウクライナ支援の宣言や、独ミュンヘンでのハリス副大統領の支援継続の強調にもかかわらず、下院ではブレーキがかかっている。
第二次大戦前の欧州の歴史をなぞる今後の展開
米国の指導者たち、特にMAGA(Make America Great Again:米国を再び偉大な国にする)を声高に叫ぶ共和党員の中には、ウクライナにとって戦争は悪いことだが、ウクライナは米国から遠く離れており、自国は南部での不法移民の流入という緊急性の高い問題を抱えていると考える者もいる。実際、最近の世論調査で、米国人の半数近くが、米国はウクライナに金を使いすぎていると考えていることが明らかになっている。そうした金の90%は米国内で使われているにもかかわらずだ。結局のところ、そうした人々は北大西洋条約機構(NATO)と欧州がまだウクライナを支援しており、またそうするのは当然であり、ウクライナは技術的に優れた能力を駆使して直面している問題の多くに対処していると考えている。
だが、第二次世界大戦前の欧州の歴史、特にナチス政権下のドイツを率いたヒトラーが戦争へと突き進んだ過去に詳しい人なら、ここで何が問題になっているかがわかるだろう。
ロシアの現体制のナチス政権との相似、そしてプーチン大統領の指示のもとでのロシアのシリアでの行動やモルドバとジョージア(旧グルジア)への侵攻、ウクライナ南部クリミアの一方的な併合、ウクライナ東部ドンバス地方での10年にわたる戦争、そして2年にわたるウクライナへの侵攻などを考えれば、今この時期にウクライナだけでロシアの進攻を食い止めさせるという判断がいかに大きな誤りなのかがわかるだろう。第二次世界大戦では5000万人超が亡くなった。現在の流れでいくと、今後どうなるのか。