こうした中、ギリシャ政府はアテネ、ミコノス島、サントリーニ島、テッサロニキなど住宅需要の特に高い地域について、外国人のゴールデンビザ申請に必要な最低不動産投資額を80万ユーロ(約1億3000万円)に引き上げると発表した。
ギリシャが2014年に導入したゴールデンビザ制度は、25万ユーロ(約4000万円)以上の不動産投資を条件に、外国人に更新可能な5年間の居住権を認めるもの。欧州のシェンゲン協定加盟26カ国にビジネス・レジャー目的で自由な入国ができ、投資家本人のほか家族も対象に含まれる。
低需要地域では25万ユーロを維持
昨年8月、ギリシャ政府は当時欧州で最低水準だった必要投資額を、高需要地域で50万ユーロ(約8100万円)へと倍増させた。外国人投資家の関心が低い地域では25万ユーロに据え置いた。キリアコス・ミツォタキス首相は、議会で「家賃に著しい上昇圧力がかかっている全地域を対象に、投資基準額のさらなる引き上げを検討している」「国の主要な投資促進策であると同時に、地元市場を保護するための重要措置でもある」と説明し、超党派の支持を得た。
ギリシャで住宅購入ラッシュ
欧州では、ポルトガル、英国、アイルランド、モンテネグロ、モルドバ、ブルガリア、キプロスなどがゴールデンビザ制度の廃止・制限を決定。スペインでも廃止論が議論される中、投資家の関心と資金がギリシャに殺到している。ゴールデンビザを申請中の外国人は、中国人を中心に数千人に上る。ギリシャ銀行(中央銀行)の報告書によると、ゴールデンビザの発給数は昨年1年間だけで4倍に増加。最近の不動産取引のうち7%が同制度に関連している。不動産購入申請数も2022年上半期の1444件から、23年同期は4000件を超えた。
地元住民には良くない傾向
他国でも問題化したように、こうした購入ラッシュは住宅価格をつり上げ、地元住民には手が届かないほどの高騰を生んでいる。投資家ビザ制度は、提供国における深刻な住宅危機の根源となっているのだ。住宅コストの上昇と地元住民への影響は、ポルトガル政府がゴールデンビザ制度を修正した主な理由の1つであり、今やギリシャの最低投資額引き上げの論拠となっている。