食&酒

2024.02.22

トップシェフが「中東イタリアン」の新店。医者・弁護士・経営者ら150人が集まるサロン発

(左から)シェフの奥野義幸、米澤文雄

東京はあらゆるジャンルの食が集結し、食のために世界各国からグルメが訪れる美食の国でもある。

そんな東京の美食を支える数々のシェフのなかでも、奥野義幸と米澤文雄は店の名前ではなく、個人名で客を呼べるトップリーグのシェフだ。その2人がタッグを組み、2023年10月、横浜みなとみらいエリアの新商業施設「LIVING TOWNみなとみらい」に中東イタリアン「Trattoria Tabulé」を開業した。

名を成したオーナーシェフ同士がなぜタッグを組み「中東イタリアン」という新ジャンルに挑戦したのか。背景には、コロナ禍での休業の経験と、未来の飲食業界への危機感があった。

横浜みなとみらいエリアの新商業施設「LIVING TOWNみなとみらい」にオープンした「Trattoria Tabulé」

きっかけはオンラインサロン

「昔からよく『誰かと一緒にお店はやらない方がいいよ』って言われるんです。やっぱり経営方針や金銭で揉めるんで。でも、米澤くんとはここまできたら揉めないなと思って」(奥野)

店舗出店の折にビジネスパートナーと共同代表となるシェフはいるが、すでに自分の城を持つシェフ同士がひとつの屋根の下に入ることは非常に珍しい。シェフというのは自らの感覚で得たこだわりを皿の上に表現する職業で、いわばアーティストなのだから、この杞憂も想像に難くない。

2人は十数年前から知り合いで、奥野の「La Brianza」と当時米澤がいた「Jean-Georges Tokyo」が同じ六本木ヒルズ内に店舗があったこともあり、8歳という年齢差を越えて縁を深めてきた。コラボレーションの経験も何度もある。

Trattoria Tabulé出店のきっかけは、コロナ禍に2人で初めたオンラインサロン「Close table」にある。2020年初頭、コロナ禍の影響で店舗営業ができないなか「今だからできること」に挑もうと考え、2021年11月にオンラインサロンを立ち上げた。断ち切られてしまった「人との交流」をオンライン実現する試みだ。

また、根底にはそれぞれが経営者になって感じてきた危機感があった。それは、若い経営者は独立した途端、仲間や先輩からの学びや助言が得にくくなること。そこで、オンラインサロンでは、参加者に向けて奥野と米澤の知見を発信。それだけでなく、サロンメンバーが自主的にプロジェクトを立ち上げることもできるため、同じ飲食業界のほかの視点も得られる。

オンラインサロンのサイト画面(一部)。現在サロンメンバーは上限を決めて追加募集を重ねながら、150人が在籍。様々なプロジェクトが立ち上げリ、サロン内での交流も活発に行なわれている
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文=北本祐子 編集=田中友梨 撮影=小田光二

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