2022年2月24日の侵攻開始からわずか数週間後、ロシア軍がウクライナのブチャとイルピニから撤退した際、世界は同軍のあまりに残忍な行為と、国際人道法(武力紛争法)を無視したロシアのやり方を目の当たりにした。ブチャの街路に横たわるウクライナの一般市民の遺体や集団墓地の映像は、今後何年にもわたって世界を苦しめるだろう。紛争にともなう性的暴力や子どもの連れ去りなども相次いで報告された。
この2年間で、ウクライナ国民は壊滅的な打撃を受けた。昨年11月に公表された国連のデータによると、ロシアがウクライナに対する本格的な武力攻撃を開始して以降、560人以上の子どもを含む1万人以上の市民が死亡、1万8500人以上が負傷したと見積もられている。だが、実際の数字はこれよりはるかに多いものとみられる。戦争が激化するほど、この数字は増え続けるだろう。
国連人道問題調整事務所(OCHA)のエデム・ウォソルヌ運営・アドボカシー部長は先月、ウクライナでの人道支援の必要性は依然として膨大な規模に上ると説明。同国の人口の約40%に当たる1460万人以上が何らかの人道支援を必要としていると報告した。100万人近い子どもを含む400万人が、いまだに国内で避難生活を強いられており、国外では630万人以上のウクライナ人が難民として暮らしている。
この2年間で、ウクライナの文化も壊滅的な被害を被った。遺産としての価値のある建造物や芸術作品など、計4779点の文化財や観光資産が打撃を受けたと報告されている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、ウクライナ侵攻による被害額が1年前の26億ドル(約3900億円)から35億ドル(約5200億円)近くに膨らんでいると推定。復興には、向こう10年間で90億ドル(約1兆3500億円)近くかかるという。