同財団による総額2億7500万ドル(約413億円)を超える寄付の中で、最大のものの1つは2002年の米マサチューセッツ工科大学(MIT)への5000万ドル(約75億円)だ。アルツハイマー病やパーキンソン病など、脳と認知に関する研究を行うピカワー学習・記憶研究所が設立された。
夫妻は、科学研究者間の共同研究がそれほど一般的でなかった当時、頭脳明晰な科学者たちにアルツハイマー病を手始めに特定の疾患に絞って基礎科学研究を共同で行ってもらうことを資金提供の条件とした(MITへの寄付は破格だった。JPB財団の寄付の多くは数十万ドル単位だ)。
ジェフリーは、新しい財団の設立初年度にMITのピカワー研究所にさらに2500万ドル(約38億円)寄付するよう遺言に残していた。MITの研究所についてバーバラは「夫と私が私たちの名前をつけた、ただ1つのもの」と2017年のインタビューで語っている。ピカワー財団の寄付の大半はひっそりと行われてきた。自身の慈善活動についてバーバラは「取り組むべきは、私自身に関してではなく、人々が必要としていることだ」とも指摘した。
バーバラはジェフリーと幼なじみで、2人はニューヨーク郊外のロングビーチにある同じ高校に通った。バーバラはロングアイランドのホフストラ大学で政治学を学び、ニューヨーク大学で歴史・教育学と栄養学の2つの修士号を取得した。
フォード財団のダレン・ウォーカー会長の最近の投稿によると、バーバラの寄付に対するアプローチは思慮深く革新的だ。「新型コロナウイルス感染症のパンデミックの初期に、バーバラは緊急対応に財団の年間寄付額を上回る1億ドル(約150億円)弱を投じた」とウォーカーは書いた。JPB財団はフォード財団や他の主要な慈善団体とともにファミリー・アンド・ワーカーズ基金を立ち上げ、数十万人の労働者に緊急の救援金を支給し、失業することが少ない職業の訓練に金を注いだ。
バーバラはリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関することを自分で決める権利)の支援者でもある。2021年と2022年にロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーズのリプロダクティブ・ヘルスと女性の権利に関する活動に1000万ドル(約15億円)を寄付している。