2024.02.15 10:00

ターミナル屋上に7.7haのブドウ畑、伊フィレンツェ空港大改修へ

新生フィレンツェ空港の完成予想図。イタリアの豊かで革新的な精神を象徴する約7.7ヘクタールのブドウ畑が設計の特徴となっている(Rafael Viñoly Architects)

新生フィレンツェ空港の完成予想図。イタリアの豊かで革新的な精神を象徴する約7.7ヘクタールのブドウ畑が設計の特徴となっている(Rafael Viñoly Architects)

イタリア・フィレンツェの空の玄関口、アメリゴ・ベスプッチ空港(フィレンツェ・ペレトラ空港)に降り立つ旅行客は将来、飛行機の窓から、新しい国際線ターミナルに向かってなだらかな勾配を描く約7.7ヘクタールのブドウ畑を眺めることになる。

この驚きの新名物は、フィレンツェを州都に抱くトスカーナ州とワイン造りとの切っても切れない結びつきを誰の目にも明らかにする構想だ。

トスカーナ州は世界有数のワイン産地。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ、キャンティ、ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ、スーパータスカンなど、数々の高級ワインで知られる。名物郷土料理との相乗効果で、イタリア料理とワインの愛好家に人気の旅行先として長く君臨している。

滑走路なども全面改修、革新的な空港デザイン

トスカーナ州には空港が2つある。フィレンツェ・ペレトラ空港と、ピサのガリレオ・ガリレイ空港だ。フィレンツェ空港はピサ空港と比べても規模が小さく、現在、フィレンツェを訪れる旅行者のほとんどはローマかミラノの国際空港に空路で入国し、そこから鉄道でフィレンツェに向かう。

しかし、フィレンツェ空港は市街地から約6キロ、タクシーで15分の距離にあり、多くの欧州系航空会社が乗り入れている。

新空港ビル建設プロジェクトを担当する設計事務所ラファエル・ヴィニオリ・アーキテクツによると、天窓を活用した新ターミナルビルは、年間590万人以上の国際線旅客受け入れを見込む。

空港も全面改修される。現行の滑走路は間近に丘陵が迫っていて短いため、向きを90度変更して延伸し、運用能力を強化。ターミナルに乗り入れる持続可能なライトレール(LRT)を新設して空港と市街地を直接結び、利便性をいっそう向上させる。

新ターミナルビルは延べ床面積約5万平方メートルで、利用者の移動しやすさによく配慮した設計となっている。ターミナル中央に「ピアッツァ(広場)」と名づけた広い公共スペースを設け、これを挟んで向かい合わせに到着ロビーと出発ロビーを配置することで、利用者の混乱を防ぐ。

チェックインエリアは出発ロビー真下の1階にあり、エスカレーターで2階に上がると、入国審査、免税店、レストラン、ラウンジなどがある。地上約8メートルの高さにある2階部分は、ピアッツァや到着ロビーと一体の造りになっていて、滑走路と丘陵地帯を展望できる。

新しい街のランドマークに

ターミナル上部に覆いかぶさるようにデザインされた、ひときわ目を引くスロープには、屋上緑化技術を活用してワイン用ブドウ畑が造られる。畝の数は38列。ブドウの栽培と収穫は地元のワイン醸造業者が担い、畑の下部に特設する専用セラーでワインの醸造と熟成を行う。

「建築家ブルネレスキの傑作である大聖堂など、フィレンツェ市内の見晴らしのよい名所から空港方面を眺めたとき、この壮大なブドウ畑はターミナルビルを隠す効果を持つ。街の持続可能な未来のための新しいランドマークとなるだけでなく、21世紀においてもイタリア経済を牽引し続けるフィレンツェの伝統、歴史、革新的な精神のシンボルとなるだろう」と、ラファエル・ヴィニオリ・アーキテクツはプロジェクト紹介サイトで述べている。

世界の建築関連ニュースを伝えるウェブサイトArchDailyによれば、このプロジェクトは建築物の環境性能を評価する国際標準LEEDのプラチナ認証を取得している。建設は2段階に分けて進められ、第1段階は2026年、第2段階は2035年に完成する予定だ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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