ロシアがクリスマス前後にGPSのスプーフィングや電波妨害を行う動機は単なる嫌がらせ、あるいはスウェーデンとフィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟などの問題に関連している可能性がある。最近ポーランド北部に配備された米国のイージス艦ミサイル防衛システムも電波妨害の標的になる可能性がある。これは主にレーダーを使って迎撃している同システムにとって問題となる。
興味深いことに、GPSの電波妨害やスプーフィングはロシア国内でも起こっている。「モスクワやサンクトペテルブルク、ウクライナのドンバス地方の北東部では、あらゆる電波妨害が行われている」とゴワードは断言。「ウクライナのドローン(無人機)からの防衛をロシアが懸念していることと、ほぼ確実に関係がある」
GPSスプーフィングは、ロシアがウクライナと戦争を始めるかなり前にロシアでみられていた。ゴワードは「ロシア大統領府(クレムリン)は朝食にGPSを食べる」と皮肉った2016年のモスクワ・タイムズの記事に言及した。電波妨害は、UberなどのGPSを活用した地上サービスだけでなく、付近の脅威となるドローンにも影響を及ぼした。ゴワードによると、ロシアは黒海のリゾート地にある別荘で休暇を過ごす高官らからドローンを遠ざけるためにGPSスプーフィングを展開しているという。
ロシアは自国の全地球測位衛星システム「GLONASS」をずいぶん前に開発しているため、自国領土内でのGPSスプーフィングの影響は少ないかもしれない。GLONASS(または中国版GPSの「北斗」)に影響を与えることなくGPSの電波妨害をしたり、スプーフィングしたりすることは可能だが、難しいことだとゴワードは指摘する。