キミには地図を描く力があるか?応募殺到「CEOの門」の審査基準

宇野康秀|USEN-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEO

『Forbes JAPAN』2024年3月号は、「『新しいリーダー』を語ろう」特集。『Forbes JAPAN』は2014年6月の再創刊から今年で10周年を迎える。その第一弾企画として、これからドラスティックな転換期を迎える世界経済、日本経済について、ポジティブに変革・創造していくために「リーダーシップ」をテーマに選んだ。これからの時代をけん引する「新しいリーダー」はどう変わるのか。「リーダーシップのあり方」はどう変化するのか。「新しいリーダーシップの教科書」を目指して、リーダーたち100人に問うた答えから私たちに必要な生き方が見えてくる。

ネットベンチャーが花開いた時代を率いた日本屈指のリーダーが次世代経営者教育を始めた。かつて「ヒルズ族の兄貴分」と呼ばれた経営者がこれからの経営者候補に伝えていることとは。


USEN-NEXT GROUP内の経営者および経営者候補を発掘する教育プログラム「未来塾」。2023年2月のキックオフで宇野康秀は参加者18人に向けて次のようなテストを実施した。出題は20問。すべて5年後の未来を予想させる問題だ。

「1ビットコインはいくら?」
「今はないスマートフォンの機能を3つあげろ」
「日本のサウナ施設数は?」

答え合わせは5年後。正解者にはポイントが与えられ、トータルポイント数で優勝した社員には沖縄のホテルの宿泊券がプレゼントされる。

一見、ただの余興に見えなくもない。しかし、塾生たちは真剣に問題に取り組んだ。なぜなら、テスト前の講義で宇野が「リーダーとは、未来を読み、描き、そこへたどり着ける地図を描ける人」と定義したからだ。

地図を描けない社員に、会社の未来は託せない──。そう宣告したにも等しい定義を聞いた後では、未来テストが単なる余興に思えなかったのだ。

宇野が地図を描けるリーダーの育成に勤しむのには理由がある。

「ビジネスで社会にいい影響を与えるには一定の規模感が必要です。日本という国のなかでみなさんに認めていただける規模として、当社グループは1兆円企業グループを目指しています。その方法として、100億円の事業をつくれる社長を100人つくります。17年にホールディングス化したときに14社からスタートして、現在ようやく25社。事業をつくれる人がもっと必要です」

新規事業を開発できる人材を社内で育成するプログラムは、ほかの企業でもよく見かける。ユニークなのは、それとは別に、社外からもリーダーを発掘・育成するプログラムを整備した点だろう。

21年3月、グループの事業会社社長を目指す人材を社外から募集して採用する「社長発掘プログラム“CEO's GATE”」を実施。約900人の応募があり、10人ほどを採用した。さらに翌22年7月には、すでに起業したスタートアップ経営者や起業家志望の人を支援・登用する「“ 起業家登竜門CEO's GATE”」をスタートさせた。

リーダーを多数育成するには、人材プールの規模が大きいことに越したことはない。ただ、宇野の狙いはそれだけではない。背景にあるのは、昨今のスタートアップ界隈に対する違和感だ。

「今起業しようとすると、資金調達にかなりの時間とエネルギーを割かなくてはなりません。ただ、VC受けする起業家だけが活躍する状況はどうなのかなと。資金調達額を夜な夜な語って回る起業家がいる一方で、資金調達がうまくできそうになくて起業を諦める人もいる。後者の人にチャンスを提供するのは、社会にとっていいことだし、私たちにもメリットがあります。そこで従来のスタートアップモデルに当てはまらない、グループ内起業家を求める枠組みをつくりました」
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文=村上 敬 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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