ソフトウェアとサービスに関しては、米国はいまも世界をリードしている。マイクロソフトやグーグルといった企業は、世界トップクラスのイノベーターだ。しかし重工業に関するかぎり、米国は冷戦終結後、ただ停滞しただけではなく衰退した。
バイデン政権はこれを問題視しており、トランプ政権もそうだった。工業の衰退を裏づける証拠は圧倒的なので、いまや、こうした傾向を逆転させるべきという超党派的なコンセンサスが形成されている。こうした傾向は米国を、中国などのライバル国による搾取や脅迫に対して脆弱な状態にしているというコンセンサスだ。
現在、中国の製造業生産高は、日米豪印戦略対話(クアッド)の参加国(米国、日本、インド、オーストラリア)すべてを合わせたよりも多い。加えて中国企業は、低価格なドローンや高密度バッテリーなど、国防に関連し得る新技術の製品化において、しばしば米国企業の先を行っている。
バイデン政権は、一連の大統領令を発してサプライチェーンの強化を図り、国内マイクロチップ産業の復興を目指す法案を可決させた。国防総省は、重要産業と労働者のスキル強化に積極的に関与している。
また、中国の搾取的な貿易慣行に反対する姿勢に関して、バイデン政権はトランプ政権とよく似たメッセージを発している。
一方、国防総省の防衛産業戦略と、バイデン政権のその他の経済政策の間には、明らかな齟齬もみられる。例えば、企業に「正当な対価」を支払わせるためとされる「法人税の引き上げ」は、米国製造業への追い風にはならない。台湾や韓国などの国々は、マイクロチップなどの重要産業に補助金を投入している。
また、連邦取引委員会(FTC)は繰り返し、アマゾンやグーグルといった主要イノベーターである企業の活動制限を試みており、こうした曖昧なメッセージによって、政権の本音がわかりづらくなっている。多くの主要産業において、ライバルの後塵を拝している時に、自国のトップイノベーターを罰することは、成功の処方箋とは言いがたい。
だが、これらは国防総省の責任ではない。問題を明確化し、実際的な解決策を提示したという点で、今回の防衛産業戦略は、政権を問わず質の高いものと評価できる。
情報開示:この意見記事で挙げたいくつかの企業は、筆者のシンクタンクであるレキシントン・インスティテュートと提携している。
(forbes.com 原文)