テスラが電気自動車(EV)のラインナップを増やし、価格を引き下げるにつれて、同社の規模は大きくなり、支配的な存在になる可能性が高い。最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスクは、これまでにも増して自由に発言するだろう。だが、それがテスラブランドの浸透を阻むだろうか。
イーロン・マスクは保守的で自由至上主義の思想の代弁者であるため、メディアによる注目の的になっている。そして、そうした注目の大半は肯定的なものではない。
例えば、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は最近の記事で、マスクは「トランプのやり方を取り入れており、マスクの挑発によりテスラから顧客が離れるリスクがある」と主張している。
そして最近、米NBCテレビのレポートなど、DEI(多様性、公平性、包括性)に対するマスクの姿勢を攻撃する記事が相次いだ。昨年11月には反ユダヤ主義的な投稿が非難され、マスクは後に謝罪した。
掲示板Redditにあるテスラに関するフォーラムには、マスクの政治的な発言や、それが将来テスラの販売を鈍化させる可能性についての
コメントがたくさんある。マスクは一見不可解に見える
下品な画像をX(旧ツイッター)に投稿しても、自己正当化することはできない。
逆にマスクに対する批判は、Xを利用する多くのマスク支持者やテスラ愛用者からの
反発を招くことが多い。こうした人々は必ずしも思慮深いマスク支持者ではない。
そして、マスクは昨年の英BBCテレビとのインタビューで、Xへの投稿で複数回、墓穴を掘ったと認めた。
だが、マスクの衝動的な発言や、マスクに関する最近の否定的な報道は、実際にテスラの販売に影響をおよぼすのだろうか。
ペンシルベニア州チェスタースプリングスを拠点とする調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズのグローバル車両予測担当副社長、サム・フィオラニは「イーロン・マスクはEV市場の拡大に貢献していない」と筆者に語った。
フィオラニは正しいかもしれない。だが現状では、影響がおよぶのはテスラの潜在的な顧客のごく一部で、マスクの発言に特に憤りを覚える人たちだけだろう。