宇宙

2024.01.17

「火と水」が地球外文明探査の重要な手がかりとなる 最新研究が示唆

技術文明を発達させることが可能な惑星と不可能な惑星とを隔てる酸素濃度の閾値「酸素のボトルネック」の概念イラスト(University of Rochester illustration / Michael Osadciw)

地球外文明の探索では、酸素を探すことが極めて重要になる可能性があるが、その理由はこれまで考えられていたほど単純ではないとする最新の研究論文が発表された。さらに、もう1つの最新論文では、惑星の大気中に二酸化炭素がほとんど含まれないのは、惑星の表面に液体の水が(そしておそらく生命も)存在する兆候かもしれないことが示唆されている。

酸素探し

地球は大気に酸素が含まれていることで、好気呼吸する複雑な生命の生存に適した環境になっている。また、燃焼に不可欠な酸素は、地球での技術文明の発達を示す証拠でもある。

米航空宇宙局(NASA)から資金提供を受けた今回の研究では、大気中の酸素と、遠方の惑星で地球外技術文明を見つけることの関連性について説明、酸素濃度の高い太陽系外惑星の探索を最優先することが、潜在的な「テクノシグネチャー(技術文明の存在指標)」を見つけるための重要な糸口になるかもしれないと示唆している。研究成果をまとめた論文は専門誌Nature Astronomyに掲載された。

酸素、火と「テクノシグネチャー」

系外惑星はこれまでに5200個以上見つかっており、現在はNASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた系外惑星の大気の研究が行われている。テクノシグネチャーは、過去または現在のテクノロジー(工学技術)の科学的証拠で、太陽系以外の恒星系における生命の存在を示すものだ。

バイオシグネチャー(生命存在指標)として知られる、惑星の大気中に含まれる微生物の直接的証拠よりも、遠方の惑星のテクノシグネチャーのほうが見つけやすい可能性があるとする説がある。テクノシグネチャーの例としては、電波信号、人工照明、太陽電池パネル、惑星の周囲の人工衛星群、何らかの巨大構造物、大気中の産業汚染などが挙げられる。

原動力

論文を発表した研究チームは、火が産業社会を後押しする原動力になるとしている。地球で科学技術が発達したのは、大気中での燃焼(火)が起こるからだ。火は、燃料と酸化剤、通常は酸素を必要とする。火のおかげで調理、建造物のための金属の鍛造、住宅資材の製作、燃料の燃焼によるエネルギーの利用などが可能になっている。研究チームは、大気中の酸素濃度が18%以上にならなければ、火を自在に利用できないことを明らかにした。これは、生物学的に複雑な生命を維持するのに必要な濃度よりもはるかに高い。NASAによると、地球の大気は約78%の窒素と21%の酸素で構成される。
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翻訳=河原稔

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