宇宙

2023.09.04 14:00

人類より進んだ地球外文明のエネルギー源「ダイソン球」探査の恩恵

異星人が恒星の周囲に建造した巨大構造物「ダイソン球」の想像図(Getty Images)

異星人が恒星の周囲に建造した巨大構造物「ダイソン球」の想像図(Getty Images)

地球外知的生命体が、どこかに存在するとしたら(今は誰もがそう考えているようだが)もしかすると人類より数十億年も文明が進んでいるかもしれない。

「テクノシグネチャー(技術文明の存在指標)探査」は、異星人による大規模な天体工学プロジェクトを対象とする探査計画につけられた魅力的な新呼称だ。現在進行中のテクノシグネチャー探査では、仮説上の構造物「ダイソン球」を対象としている。ダイソン球では特定の恒星のエネルギーが活用されると考えられるが、どのような仕組みなのかは想像するしかない。英国生まれの米国の物理学者、故フリーマン・ダイソンが最初に提唱したダイソン球は仮説上、巨大なスーパーコンピュータや人工居住地に電力を供給し、宇宙船を推進させ、高度な星間通信を実現するために利用するとされている。

ある1人のスウェーデン人天文学者の主張が正しいなら、高い知性を持つ異星人は、自分たちの暮らす惑星が公転する恒星からのエネルギーをあえて使わないようにしているかもしれない。天の川銀河(銀河系)にある恒星の約75%がM型赤色矮星(わいせい)であることを考慮すると、異星人は近くにある赤色矮星の1つのエネルギーを利用している可能性がある。筆者たちが今こうして話している間にもだ。

スウェーデンの首都ストックホルムを最近訪れた筆者は、より理解を深めるために、このテーマに関して最近どのように考えているかについて、ウプサラ大学の天文学者エリク・ザクリソンと膝を交えて議論した。

現在、ザクリソンと指導する博士課程学生の1人は、欧州宇宙機関(ESA)が作製した銀河系の恒星カタログ「ガイア(Gaia)」と赤外線天体カタログを調べて、ダイソン球の候補を探す作業を進めている。

ザクリソンとウプサラ大の博士課程学生マティアス・スアソは、英国王立天文学会の学会誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(MNRAS)』に学術論文を投稿する予定だ。ザクリソンの研究チームは、太陽系の最も近傍の恒星500万個から始めて、現在のところ約10個の暗い赤色矮星を、ダイソン球をともなう有力候補としてリストアップした。名前が知られている天体は1つもない。だが、チームの次の論文では、候補の星の詳細なフォローアップ観測を実施する予定だ。

異星人が赤色矮星の利用を選択した理由

第一の理由は、赤色矮星の推定寿命が何百億年~数十兆年だからだ。つまり、宇宙の年齢におよぶほど極めて長持ちするエネルギー源となるわけだ。

赤色矮星を利用するのは、単に近くにあるからというだけかもしれないと、ザクリソンは筆者に語った。
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翻訳=河原稔

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