実用化に立ちはだかる壁
AI医療機器の開発が加速する中、課題となっているのが、実用化に向けた承認審査に要する時間の長さです。2月時点で、日本で薬事承認・認証を取得しているAI医療機器は約30件。新たなAI医療機器を実用化するために必要な審査には1年以上かかるケースもある上、承認後も機器がバージョンアップする度に審査が必要となり、医療現場で活用されるまでの道のりは平坦ではありません。
また、AI医療機器への保険適用が進んでいないという点も、病院がAI技術を導入する際の障壁となっています。保険が適用されないAI医療機器が使われた医療行為に対し、医療機関は公的医療保険からの診療報酬を受け取れないため、厳しい経営状況にある医療機関ではAI技術の導入が現実的ではないのです。
こうした課題解決に向け、AI医療機器の審査承認スキームの確立と承認の迅速化を求める協議会が発足。16社の企業が参画し、AI医療機器を社会実装する上で現場が直面している課題を提言しています。また、政府は、プログラム医療機器の実用化を促進する戦略「DASH for SaMD」を打ち出し、支援体制の強化を急いでいます。
AIを未来のヘルスケア変革に繋げる
10月、世界保健機構(WHO)は、「AIの設計・展開・使用の中心に倫理と人権を据えること」を求める新たな指針を発表。AIを医療に適用する際に必要な6つの考慮事項を示しました。年齢や性別、人種など実社会の構成が正確に再現されていないために起こる、非倫理的なデータ収集や偏りの助長などのリスクを最小限に抑える必要性を訴えています。医療におけるAI活用のモメンタムをより高めていくことは、医療業界の慢性的な人手不足、高齢化、地域間の医療格差といった日本が抱える課題を解消し、未来のヘルスケアを変革すると期待がかかります。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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