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2024.01.18 07:30

AIは医師の優秀なアシスタントになれるか

督 あかり
確定診断を下すのはあくまで医師だとし、「人とAIが一緒に検査することでがんの発見精度を高めることができる」と、同社の創業者で胃腸・肛門科の医師である多田智裕氏は語ります。世界経済フォーラムは、世界の最重要課題に取り組む革新的なテック企業として、同社を「テクノロジー・パイオニア・コミュニティ 2021」に選出しています。

“人とAIが一緒に検査することでがんの発見精度を高めることができる。”

—AIメディカルサービス、多田智裕代表取締役CEO

また、季節性インフルエンザの診断をサポートするAI医療機器の開発も進められています。「nodoca(ノドカ)」は、咽頭画像と体温や自覚症状をAIが解析することで、インフルエンザに特徴的なのどの様子や症状などから十数秒でインフルエンザ検査の判定を出します。従来の鼻咽頭検査とは異なり、検体を採取する過程がないため痛みも伴いません。

インフルエンザに感染するとできる咽頭の濾胞(ろほう)と呼ばれる独特の腫れ物は、視診で判別するためには熟練の医師による診察が必要とされています。名医の技術をAIで再現することを目指し、nodocaを開発したスタートアップのアイリスは、50万枚を超える咽頭画像でAIを学習させ、問診の内容と組み合わせて総合的に判定を出すシステムを作り上げました。

同社を立ち上げたのは、AIの力で医師間の技術格差をなくすことを目指す、救命救急の専門医である沖山翔氏。AIを搭載した医療機器として薬事承認を取得したnodocaによる診断は、AI医療機器を用いた診断に公的保険が適用される、日本初の事例です。

また、AMIが開発した「超聴診器」は、胸に10秒当てるだけで心音センサーから得た情報をAIが判断し心疾患の有無や種類を解析し、医師の診断をサポートします。心音・心電をデジタル化し、データを送信することができる超聴診器は、医療現場で急速に広がるオンライン診療の新たな可能性として、遠隔聴診を実現すると期待されています。

官民連携で医療の最適化を図る政府

厚生労働省は、2017年に、ゲノム医療、画像診断支援、医療品開発や手術支援など6つの領域を、医療AIを導入すべき重点分野に定めました。その翌年、政府は、医療分野におけるAI活用を推進するプロジェクト「AIホスピタル」を立ち上げ、医療の最適化や医療従事者の負担軽減に向けた取り組みを進めています。

日立製作所、日本IBM、ソフトバンクをはじめとする企業5社が参画するこの官民プロジェクトでは、セキュリティの高い医療情報データベースの構築や、AIによるインフォームドコンセント補助や音声認識で診療記録を文書化するシステムの開発などが進行しています。
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文=Naoko Tochibayashi, Communications Lead, Japan, World Economic Forum; Naoko Kutty, Writer, Forum Agenda

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